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嘘ついてない五条

「悟ってさ、何してんの」

ソファーで自分の家にいるようにくつろぐ彼氏みたいなものにコーヒーを差し出しながら、あきらはかねてからの疑問を口にした。
この男との付き合いはそろそろ半年くらいになるけれど、あきらは未だに彼の職業さえ知らない。知っているのは五条悟という名前だけだし、それも本当かどうかはわからなかった。
まあ顔がめちゃくちゃいいからいっか、と大して気にしてはいないのだが、不思議だという思いは事あるごとにいだく。
五条と来たら金には困っていなさそうだし、たまに困り顔の真面目そうな男が丁寧に迎えに来たり、見るからにちゃんとした大人な男性がすごく面倒そうに迎えに来たりするのだ。そういうときはえ~と精一杯の駄々をこね、でも結局黒塗りの高級車に乗って帰って行く。

疑問を投げかけられた五条はあきらの顔を見てぱちぱちと瞬きをした。羨ましいくらい長くてバサバサの睫毛が頬に影を落としている。やっぱりとんでもなく綺麗な顔をした男だ。

「何って、テレビ見てる」
「そういうことじゃなくて」

わかってるでしょ、とあきらがむっとすると、ケラケラ笑った。睨んだら少し収まったが、まだ顔は笑っている。

「んー、フフフ、そうだねえ」
「…………」
「グッドルッキングガイは世間を欺く仮の姿。しかしてその実態は、なんと呪術師でーす!世界中で引っ張りだこの最強で最高なグッドルッキング呪術師」
「…………そういうのいいから」

眉を寄せて冷静に責め立てたあきらを見て、五条が面白そうにまた笑う。よくそんなファンタジーみたいなことを言うものだとあきらは呆れた。呪術師って。いつの時代の職業だ。

「まあそれは置いといて。高専の先生やってるよ!」

何が楽しいのか、顎に手をあててポーズを取る。五条が楽しげに言った。上機嫌の五条に今度こそあきれ果てたあきらは、半目で五条を見る。

「だからそういうのいいって」
「え?」

五条が目を見開いた。あきらがやれやれという顔をする。

「言うに事欠いて先生って。悟とかどう考えても教える側の人間じゃないじゃん。まだ呪術師の方がマシ」
「…………」

ほんと全然面白くないよ、と続けると、さっきまで上機嫌だった五条の顔がみるみるうちにむすっとしたものになる。ソファーの上で小さく体育座りをして、無言で自分は今拗ねていますというアピールを始めた。

「何拗ねてんの!?」
「なーんにもないですけどぉ?」

拗ねた五条はいつものことながら面倒くさい。
どうも本当のことを言うつもりはないようだ。とりあえず呪術師ということにしておくか、とあきらは思った。