あー疲れたとぼやきながら部屋に入ってきたあきらに気づいた伊地知は、ごく自然にあきらのところに寄ってきて、まず上着を受け取った。皺にならないようにハンガーに掛け、あきらをソファーの方に促し、お茶がいいですかコーヒーがいいですかと尋ねる。
「……お茶」
と応えれば数分もしないうちに、あきらの好きなお茶とおまけに煎餅なども用意され、あきらはため息を吐いた。
「伊地知さあ、こういうところだよね」
「へ?何がですか」
「わからないならいい」
気が利きすぎるから五条にいいように使われるのか、五条にいいように使われすぎたから気が利くのか、微妙なところだが。
不思議そうに首を傾げている伊地知を放って、啜ったお茶はおいしかった。