変な人がいる。
といっても高専の構内を歩いている呪術師なんて、みんな個性爆発という感じなので、今更袈裟を着た長髪の男性なんかに驚いたりはしない。目が合ったのでこんにちは、と一応挨拶すると、切れ長の目を見開いて、その人は私が見えるのかい、と格好よりも奇妙なことを言った。
「はあ、見えますけど、それが」
「私はもう死んでいる」
「私はもう死んでいる?」
オウム返しに繰り返してあきらは首を傾げた。お前はもう死んでいる、ならば心当たりはあるが、そっちはない。疑問符を飛ばしているあきらを見て、しばらく男は何かを考えていたが、結局吹き出して、笑い始めた。
「ええ?どうかしました?」
「いや。もうなんか、どうでもいいかと思ってね」
「何が?」
何もわかっていないあきらに、男がにっこりと胡散臭い笑顔を向けた。
それから空を仰いで、「どうせ死んでいるんだし」とこれまたわからないことを言う。
「仮にも私の親友なら、一人でどうにかするだろう」
穏やかな声だった。何かあるのか、と思ってつられて見上げた空は抜けるように青く、雲一つさえない。
色々腑に落ちないあきらが、空を見るのをやめて、視線を戻した時には。
「……あれ?」
男はもう、どこにもいなかった。
首を傾げながら戻ってきた寮には同級生の伏黒恵がいた。頻りに首を傾げているあきらを見て、「何かあったのか」と尋ねてくる。
「いや、…………術師ってみんな、変だなって」
「今更だろ」
呆れたような目を向けられても、今のあきらには反論がない。うーんと腕を組んで、あきらが唸った。