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硝子のネズミ

※学生時代

 

「チュー助がいない……」

家入が別室で飼っている実験用のネズミたちのケージを見て、餌の袋を持ったあきらが呆然と呟いた。
バッとこちらを振り返ったので、ああ、と記録をつけながら家入が頷く。

「昨日実験に使った」
「なんで!」
「目についたから」

というかあきらがわざわざ名前なんかつけて、かわいがるから目につくのである。実験や解剖に使う生体なんて特に拘りはないのだから、結局はふとコイツにするかと思うかどうかだ。
つまるところ、お気に入りのネズミの寿命を縮めているのは、あきら自身と言うことになる。

「も〜!」

怒ったような声を出して、あきらが餌を袋からわしづかむ。バラバラと餌場に追加し、たまたま一番に自分の手にまとわりついた茶色の毛並みのネズミを見た。

「……次のチュー助はこの子にするか」

切り替えが早い。
懲りずにチュー助の名を背負わせるあきらの小さな背中を眺めて、自分で飼えばいいのに、と家入は思った。