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最強なので

「げっ、ワックス忘れた」

数日分の荷物とともに共用スペースまで下りてきた五条が、ふとそんなことを言い出した。後を歩いていた夏油に、「傑、持ってる?」と尋ねる。持ってないよ、と彼は返した。

「私は使わないしね」
「そうだっけ?」

五条は小首を傾げて、じゃー取ってくると荷物を放り出して元来た道を行ってしまった。取り残された夏油が、ソファーに座って自分を見つめるあきらに気づき、やあと声を掛けた。

「持って行ったって結局あまり使わないんだよ、悟のやつ」

と笑っている。そうなんだ、と答えたあきらの声は、自分でもわかるくらい暗かった。

夏油と五条は今日から任務に行く。二人だけでだ。
家入もあきらも連れて行ってもらえない、ということは、足手まといがいてはままならないくらい、危険な仕事だということだ。
付き合いは短いし、この二人、特に五条ときたらあきらをよくからかってくるから、腹が立つことは多いのだが、それでも彼らはあきらの同級生だった。
向こうで何が待ち受けているのか、あきらは知らない。けれど、何かひとつでも間違えば、この二人にだってもう会えないかも知れないのだ。

暗い表情で黙り込んだあきらをまじまじとしばらく見つめると、夏油が不意に笑い出した。

「大丈夫だよ」

ぽん、とあきらの頭に、大きな温かい手が乗る。

「——私たちは、最強だからね」

何が起きても負けはしないさと、穏やかな声で夏油は続けた。恐る恐る見上げると、夏油は声の通り、優しく笑っていた。

「……気をつけてね」
「ああ」

しんみりとしたのも束の間、遠くからドタバタという足音と、見つかんなかった!もういい!という五条の暢気な声が聞こえて、あきらは少しほっとしたような、馬鹿らしいような気持ちになった。