死にかけたところを助けられた。
これはまあいい。呪術師という職業柄死にかけることはまああるし、同業に間一髪で助けられるという事も幸運ではあったと思うが変なことではない。
助けてくれた同業が旧知の仲だった。
これもまあいいだろう。そもそも呪術師の業界は狭いので、ある程度長くいると大体は顔見知りだ。友人に情けない姿を見られるというのはなかなか恥ずかしいが、死ぬよりは全然いい。
だが。
助けてあげるかわりに金を要求された。
なんというか、これは。
「本当に請求されると思わなかったなあ……」
かつぎ込まれた高専医務室の一角、ベッドの上で携帯を操作しながら、あきらはごちた。
傍らには微笑みを浮かべて椅子に座り、コーヒーを飲む友人がいる。あきらの今回の命の恩人だ。
「まさか。私が金絡みで冗談を言うわけないだろう」
「そうでしたね。ハイハイ……」
でも危ないところにいい感じに現れてこの貸しは高いぞなんて漫画の台詞じみたことを言われたら、普通冗談だと思うじゃん。とあきらは思ったが、口にはしなかった。
じきに用を終え、携帯を枕の横に放り出す。
「振り込んどいた」
「ありがとう」
その微笑みを見る気にもならない。シーツを被り、もう寝るのだと態度で示すと、冥が立ち上がった気配がする。そろそろおいとまするよ、と機嫌のいい声が告げた。
「……ちょっと多く振り込んどいたから」
「おや。せっかく友人料金にしておいたのに」
「私の命は安くないんだよバーカ」
じゃあありがたく、と言い残して去る冥に、あきらは彼女に届かないような小声でこっそり、こっちこそと返した。