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迫力負け

※学生時代

 

あきらと五条が喧嘩をしている。

「またか」
「まただね〜」

原因はわからない。ただ大体において余計なことをやらかし、あきらを怒らせるのは五条の方だったので、今回もきっとそうだろう。
さっきから睨み合っている同級生二人を眺めて、夏油と家入は息を吐く。二人が喧嘩をすることで、一番影響を受けるのが近くにいるこの二人だからだ。
せめて担任教師がここにしばらくこないように、と願ったその時、感情を抑えきれなくなったらしいあきらが、バッと手を上げた。そのまま五条の頬めがけて勢いよく──

「──叩かせるわけねーだろ」

ハン、と五条が鼻で笑う。術式を使用したらしい。
五条に触れることなく止まった手を見て、あきらの目が今度は冷えた。表情から怒りも消え、くるりと教室のドアの方へ振り返る。

「もういい」
「は?」

いきなり自分へ向かってこなくなったあきらを怪訝そうに五条が見た。

「もういいって言ったの。どうでもいいよ。許さないだけだから」

肩越しに睨まれたらしい五条の体が強ばる。あきらの視線にはよっぽど迫力があったらしい。
静かに引き戸が閉まる。「怒ってるねえ、あきら」と家入が暢気に言った。

「……あきらの迫力勝ちかな」
「……うるせえ」

と夏油に返しながらも、あきらを追いかけて教室を出る五条の背には、焦りの色が滲んでいた。