「何で私じゃなくて猪野なんですか!?」
呼んだのは猪野一人のはずなのに、どうしてあきらがいるのだろうか。機嫌の悪さを隠しもせずに自分に詰め寄ってくる年の離れた後輩に、七海は内心で一つ溜息を吐いた。
「まーまー、高遠」
にやにやと、本来の待ち合わせ相手の猪野がぽんとあきらの肩を叩いた。ギンっと睨まれても全く気にしない様子で、「七海サンが呼んだのは俺なんだし」と得意げに語りかけている。あきらはしばらく猪野を睨み上げたあと、七海に視線を戻して、「私の方が強いのに!」と吠えた。
「ああん!?」
「私準一級だし!給料もあんたより多いし!」
「それがどーした!俺だってすぐ一級だからな、一級!」
「まだ推薦貰えてないくせにっ」
「二人とも」
七海が額を押さえながら呼びかけると、あきらと猪野が揃って「はいっ」といい返事をした。
「事は一刻を争います。いいですか、仲間割れに時間を割いている暇はありません」
「……はい」
「高遠さん」
「はい」
「猪野君を呼んだのは、彼の術式が今回の相手に有効と思われるからです」
「へ」
「そーなんすか!」
来訪瑞獣。自らの体を器として、四種の瑞獣の能力を降ろす降霊術式。
本人に自覚があるかどうかはさておき、魂の話であるならば、彼はきっとあの呪霊と同じ土俵に立てるだろう。
緊張感なく、よっしゃーと張り切る猪野に、あきらが不満そうな視線をちらりと向けた。七海を見て、ぶすっとした顔のまま口を開く。
「……今度は私にも頼ってくださいね」
「必要があれば、お願いしますよ」
「七海さんが冷たい……」
「さー行きましょ!七海サン!!」
「猪野はうざい……」
「ああ!?」
「…………二人とも」
確か成人はしていたと思うのだが、ともすれば虎杖よりも振る舞いが子供だ。ギャーギャーと言い合う二人にいい加減にしてくださいと注意すると、すみませんとまた素直な返事があった。