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ご報告まで/家入

※学生時代

 

「あきらと私、付き合うことになったから」
 

前置きも何にもなかった。

教室に揃って顔を出したと思ったら、同期の女子二人は仲良く手を繋いでいて、どちらかというとサバサバした性格の二人にしては珍しいと思って目を丸くしていたら五条と夏油がだべっていた席までやってきてこの一言である。

ぽかんと大口を開けた五条と、目を見開いた夏油の顔を見ても、硝子はまだ平然としていた。

「じょ……」

冗談だろ、と言い掛けた言葉は、硝子の後ろに隠れて顔を赤くしているあきらを見てしまうと後が続かない。仕方なく開きっぱなしの口を見て、硝子がははっと笑う。

「……どうして、その、私たちに言うんだい」
「一応言っとくかーって思って。ね」

額を押さえた夏油が尋ねると、やっぱり堂々と硝子が返して、あきらに同意を求めた。普段の態度とは大違いで恥ずかしがっている様子のあきらが、小さな声でうんと言った。
てことでよろしくー、と軽く続けて、ピースサインまでした後、硝子とあきらはそのまま連れだって教室を出ていってしまった。

つい後を追いかけた五条と夏油が扉から廊下をのぞき込むと、手を繋いだまま歩く同級生女子二人の後ろ姿が見える。
最初は引っ張られるだけだったあきらが徐々に横に並んで、たまにお互い顔を見合わせて笑っていた。遠目にも充分、幸せそうなのがわかるくらいの笑顔だった。

「…………」

これから座学なのにどうするのかとか、オマエら女同士じゃんとか、こんなに堂々と宣言されてこれから先出張でオマエら二人が相部屋の時にどういう気持ちでいればいいんだよとか、残された二人の頭の中を色々な思考が駆け巡る。

とりあえず。

「……傑」
「……何だい」
「俺らも付き合っとく?」
「勘弁してくれ」

どうしてそうなるんだと、夏油の溜息の音が大きく聞こえた。