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ないない

※学生時代

 

「えー、五条?ないない」

廊下で行われていた、女子の会話を聞いてしまった。はっきり聞こえたのはあきらのその言葉だけで、何の話をしていたのかはわからない。けれどなんとなく予想はつくと言うもので、隣を歩いていた五条はふらふら来た道を戻ると、教室に入って机に突っ伏した。爪をがりがりと机の表面に立てては呻いている。
どんな呪霊や呪詛師と向かい合うときも、自分とやりあうときだって自信満々に笑っている親友が、たった一言でこれだ。

特級だなんだと言われていても、五条悟はまだ夏油と同じ十代の少年である。
そしてその年頃の人間にとって、恋とは恐ろしく重要なものなのだ。

「まだそういう意味とは限らないだろ」

笑いをこらえながら夏油が励ますと、五条がぴくりと反応した。

「……じゃあ他にどんな意味があんだよ」
「…………」

返す言葉が特に見つからなかったので、夏油はにっこりと笑ってみる。しかし五条は顔を上げないので、特に意味はない。

「……まあそういう意味だったとしても、これから挽回すればいいじゃないか」

印象なんて少しのことで変わるよ、と続ける。腕の隙間から、青い瞳がじろりと夏油を睨んでいた。