「次の一年?コーハイ?」
頼んでもいないのにされることになった高専の案内中、立ち寄った自販機置き場の前で、今の一年だという高遠あきらと出会した。初対面のその先輩は伏黒を見て目をぱちぱちと瞬いている。会釈の後気まずげに視線を逸らすと、五条が面白そうにふっふーと笑った。
「そうだよ、後輩。来年からあきら達ももっとしっかりしなきゃね。このグレート・ティーチャー・ゴジョーの手も離れることだし、不安だろうけど……」
「五条先生の手を離れる?」
「うん?」
「来年担任じゃないの?」
「そうだよ。知らなかった?」
あきらが目を見開いて、上機嫌な五条の言葉を遮った。そして五条の返事を聞くと、次の瞬間、
「やったー!!!」
と拳を突き上げた。
「……あきら?」
「来年五条先生じゃないんだ!そっか!みんなにも知らせてくる!」
「あのさ」
「後輩くん、大変だろうけど頑張って!何かあったら相談乗るからね!じゃっ!」
「…………」
ぴっと手を挙げると、輝かんばかりの笑顔の先輩はそのままどこかに駆けていく。言葉通りこの朗報をほかの学生に届けに行くのだろう。止めようと中途半端にあがった、隣の五条の手が哀れを誘う。
「……五条さん」
伏黒が声をかけると、それまで止まっていた五条が気を取り直し、「ハイ!」と大きな音で手を叩いた。
「次はお待ちかね!寮行きます!恵、はぐれないように!」
「……はい」
こんなとこではぐれるも何もねぇだろとは思ったが、さすがに今の五条に言う気はなかった。ちょっとかわいそうだったので。