※星漿体と暮らすの夢主
星漿体である天内理子の暮らしについて、あきらと黒井の役割分担は完全に済んでいる。だがしかし、突発的に発生するあきらの仕事とは異なり、毎日休みなくルーティンをこなす黒井を手伝うのは自然な流れだった。たとえば材料を切るだとか、皿洗いだとか配膳だとか、そういう誰でもできそうなことは、手が空いていればあきらが当たり前にやる。
「……これ、理子食べないんじゃないの?」
その時もそうだった。
一汁三菜、栄養バランスと見栄えを完璧に整えられた理想的な食事を、テーブルに運ぼうとしてふと目を留めた。そっと添えられた小鉢に、理子が大嫌いな椎茸がばっちり見えたからである。
「ああ、大丈夫です。そのまま持って行ってもらえれば」
お嬢様の好き嫌いなんて知り尽くしているだろうに、黒井はちょっと目を遣ると、笑顔でそう言った。あきらは首を傾げたが、結局わかったといって膳を手に持つ。
「黒井!しいたけは入れるなと言ったろう!」
案の定食事が始まるとすぐ、小鉢にめざとく気づいた理子が怒り出す。理子の正面、あきらの横で、黒井が眉尻を下げた。
「ですが理子様、好き嫌いは体によくありません」
「知らん。妾は食べたくない。あきら、これはオマエにやる。ありがたく食べよ」
「はいはい」
小鉢が丸ごと寄越され、わがままをなんでもきくようにと上から言われているあきらはそれを大人しく受け取った。横で黒井が困ったようなため息を吐く。だからこうなるって言ったのに、とあきらは思った。
「妾は好きなものだけ食べるのじゃー!黒井のハンバーグは今日もうまい!わはは!」
「……それは、よかったです」
上機嫌で本日のメインであるハンバーグをぱくぱくと食べていく理子、それを見て控えめに笑った黒井、二人をそれとなく見比べて、あきらはやっと、彼女の意図に思い至った。