「あきら、ちょっとジュース買ってきて」
虎杖悠仁を匿うことになった。
これから彼が過ごすことになる小部屋まで付き添い、電気がここで、こっちに行くと洗面台で、等々簡単に説明を行っていたあきらを、五条が不意に呼び止める。隣で説明を聞いていた虎杖と顔を見合わせた。ぴたりと口を閉じ、間を置いてから、「……今ですか?」とあきらが尋ねる。
「うん今。なんでもいいから。二本ね」
ジュースが飲みたいならペットボトルのがここにありますがと聞いてみてもとりつく島もない。いいから早く、と急かされて渋々、あきらは小走りで外へと向かった。
高専の敷地は広い。おまけに虎杖を隠すために、万一にも学生が入り込まないような場所を注意して選んでいるから、彼らの生活圏内にある自販機置き場とは距離がかなり空いている。
早くと言われたからたらたら歩いていくわけにもいかず、あきらは迅速に、言われたジュースを買ってきた。なんでもいいと言われてもきっと思ったものでなければ文句を言われるので、五条がよく飲んでいるものを思い出して買う。
息を切らしながら帰ってくると、五条は虎杖となにやら楽しそうに話していた。人をパシっておいて、と不満を覚えたが、文句を言う度胸なんて勿論ない。
五条さん、戻りました、と若干へろへろになった口調とともにジュースを献上する。
「高遠さんお帰り!」と笑ってくれる虎杖が唯一の癒しだった。
「お疲れ〜」
言いながらあきらの手から五条がジュースを受け取る。そのまま二人で飲むのかと思えば、近くにあった棚の上にコンコンと音を立てて置く。
ん?と状況のわかっていないあきらが目を瞬くが、そんなことは気にも留めない。
「じゃあ、ではまず、あちらの缶ジュースをご覧ください」
機嫌のいい五条が、先生の顔をして、傍らの虎杖に語りかけた。