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凹む乙骨

「うわ」

ちょっと歩けばシマウマが闊歩しているような場所でも、Wi-Fiは意外と通る。そうして世界と繋がった携帯を確認していたあきらがちょっと引いたような声を出すと、隣で休んでいた憂太がどうしたんですかと尋ねた。

「五条から」

ため息とともに寄越された携帯を受け取る。開いてあるのはこの間日本から遙々こちらまでやってきた元担任との個人チャットの画面で、見ていいのか一瞬迷ったが、相手から送られてくる画像に写る人物たちがみんな知っている顔だったので、憂太はくすっと楽しそうに笑った。ジャージを着た二年と、それから一年。会ったことのない女の子がいるが、何回か写真が送られてきたので、彼女が自分の後輩であることは憂太も知っている。
楽しそうでいいなあと懐かしさや羨ましさ、寂しさが顔を出したが、それだけだ。引くような要素は特に見あたらない。

「これがどうしたんですか?」
「下、下」

どうやら写真はまだまだあるらしい。言われるままにスクロールしていくと、段々写真の様子が変わり始めた。去年の交流会で顔を合わせた覚えのある京都校の生徒たち。なぜかよくわからないポーズを取って固まっている、見たことのない子の写真(でもたぶんこれがこの間頼まれた虎杖悠仁という子なんだと思う)。それから……

「えっ」
「アイツ、やりやがった。学長カンカンだろうね」

野球のユニフォームを着ているみんなの写真。

バッドやグローブを手に、試合をしている様子。
最後に「1ー0で東京校勝利!さすがGTGの生徒たち」とメッセージがあり、ということは、

「交流会って、野球の時もあるんですか……?」
「は?いや、ないよ、普通は」
「ぼ、僕の時は一日目の団体戦も二日目の個人戦ももっと殺伐としてて」
「だから普通はそうだって」

今年がおかしいんだよと付け加えるが聞いている様子がない。みるみるずーんと暗い雰囲気をまといだす憂太にあきらが「どうしたのいきなり!」と慌てている。

「僕も、僕もみんなと野球、したかった……」
「あー……」

そのまま一向に顔を上げない憂太に、帰ったらみんなでやればいいじゃんとか来年があるじゃんとか色々と慰めの言葉をかけ続けてみたが、残念ながら効果はなかった。