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五条対策

五条と居酒屋にくるとろくなことがない。下戸だからと酒は一滴も飲まないくせに、周囲のざわめきに酔うのか普段の数倍質が悪くなるのだ。今日なんか王様ゲームしようよ〜と店の割り箸をバキバキ割り出すし(迷惑)、ペンがないから数字が書けないと言って騒ぐし、ていうかそもそも三人で何が王様ゲームだって感じだし、唯一対等な家入は我関せずで黙々と日本酒を飲み続けているし。もういい加減にして欲しい。

「ちょっと僕トイレ」
「あ、はい。ごゆっくり」

唐突にそう言って席を立った時には本当にほっとした。しかしその平穏も束の間のことで、すぐに終わるのだと思って深いため息を吐く。と、家入があきらのグラスを指さした。

「それ、カクテルだっけ?」
「はい。飲みます?」
「私はいい。ちょっと貸して」
「はあ……」

言われるままに差し出すと、右手で受け取る。そして向かいにあった五条のオレンジジュースをつかむと、その中にあきらの飲みかけのカクテルをとくとくと注いだ。

「ええ!?」
「色似ててよかった。多分バレないだろ」
「いや……なんでそんな、わざわざ」
「アイツ下戸だから。ちょっと飲んだだけでもすぐ寝るんだよね」
「……」

つまり寝かせてしまおうという魂胆らしい。
いやそんなちょっとで効果があるものなのか。なんだか青いお酒は睡眠薬入れてもわかんないからやめておけとかいう、いつか受けた注意が頭を過ぎる。一応五条も酒の弱さを自覚して、飲まないようにしているわけで、飲みたくない人間にこっそり飲ませるのはどうなんだ。でも。

「ただいまぁ〜」

その時ちょうどふらふらと笑顔を振りまいて帰ってきた五条の顔を見て、まあいっか、とごちゃごちゃ考えていたことは吹き飛んだ。
あきらは呪術師なのだ。正義のヒーローなどではない。清濁併せ呑み時には手を汚す、呪術師なのである。