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どんなに強くなっても/五条

目の前で人が死んだ。人が死ぬのなんて高専に来てから珍しくもないし落ち込むことも少なくなってきたけれど、それでも目の前でとなると流石に堪える。
あとちょっとだった。あと少しあきらが強ければ、あきらが速く走れたら、すぐに気がついていれば。こっちに気づいて助けてと言った人を、助けてあげられたかもしれないのに。

ぐすぐす部屋で泣いていると、いつのまにか入ってきたらしい担任教師が、「あげる」と言ってペットボトルを放ってきた。受け取ったそれを開ける気にもならずに、熱を持った顔にあてる。冷たくて気持ちがいい。五条があきらの許可も取らずにベッドの端に腰掛ける。

「……先生」
「んー?」
「強くなったら、悔しいこともなくなる?」
「うーん、そうだねえ」

少し考えた後、この世で最も強い人は、「まあ、ちょっとは減るよ」と答えた。嗚咽を抑えて、整った横顔を見る。そのあとまた増えるけど、と言葉が続いた。

「……先生も、悔しいと思うことあるの?」

五条があきらの顔を見る。少しおどけたように笑いながら、先生は「勿論」と言った。