※荒唐無稽の子と五条
死んだと思ったら幽霊になった。呪術師は死んだら呪霊になることがあると聞いてはいたものの、まさか幽霊になるだなんて思いもしなかった。ていうかいたのか、幽霊。世の中の不思議なことは大体呪霊で説明がつくので、てっきり呪霊イコール幽霊なんだと思っていた。
そんなこんなで幽霊になったはいいものの、特に他に行くところも思いつかなかったので、あきらはなんとなく高専に戻ってきてみた。
呪術高専にいるのは呪霊を見る目を持つ人たちであって、幽霊が見えるわけではないらしく、今のところ誰にも気づかれていないようだ。あきらを捉えるのはその辺を我が物顔で散歩している猫くらいで、白眼だか六眼だかいう特別な目を持つ五条先輩でさえ、こちらのことは見えていない。
誰にも気づかれないのをいいことに、ふわふわと周りを漂って、中指を立ててみたり悪口を言ってみたりするが、当然のように反応はない。生きているときは言えなかったことも多いから、これは結構楽しい。一人きりの教室の窓から、ぼんやり外を眺めている五条先輩に向かって「センチメンタルごっこですか」とからかっていたら不意に自分の名前を呼ばれて、そのときだけ、ほんの少し悲しかった。