高専を卒業して数年し、やっと昇級に必要な推薦を得ることができた。となると次は推薦者以外の一級術師と任務をこなし、能力が一級に足るものなのかの審査を受けなければならない。
審査の担当となった一級術師──東堂葵を見上げると、彼は「来たな」と余裕ありげに笑った。
一級術師、東堂葵。
見た目や態度からはちょっと信じられないが、まだ学生だ。
呪術師の世界は実力主義、強い奴は上に行くし弱い奴はそのうち死ぬ。だからあきらより等級が上の東堂が審査を担当するのは当然のことではあるのだが、でもやっぱり年下に審査されるということに思うところはある。
せめてもの救いは在学期間が被っていなかったことだろうか。
タメ口でいいのか敬語がいいのか迷って、結局あきらは後者を取った。
「今日はよろしくお願いします」
勝手に圧に負けたとも言う。
東堂は頷いて、「ああ、よろしく頼む」と答えた。お前はタメ口なのかよ。と思わないでもないがもちろん口には出さない。
「補助監督が到着したら現場に向かう。資料は読んだか?」
「あ、はい、読みました。まずは現場の残穢の確認からですよね」
「そんなところだろうな。言っておくが今回方針については俺は口を出さん。そこも評価対象だと思ってくれ」
「……はい」
これからの具体的なことを想像して、あきらが体を堅くする。東堂がこちらを見下ろしてフフッと笑った。
「そう緊張していては出せる実力も出せないぞ!Ms.高遠!」
あきらがまたピシッと固まった。今度は任務のことを思ったからではなく、唐突に出てきた奇妙な呼び方のせいである。