※学生時代
「悪いが君には渡せない。誰か大人の男性を連れてきていただきたい」
家の蔵から見つかった呪具を引き取って欲しいと呪術高専に依頼があった。それでわざわざ実習帰りに寄った結果がこれだ。出迎えられるなり家の主らしい男性に難しい顔で言い放たれた言葉に、浮かべた愛想笑いがひきつる。あきらはこめかみに青筋を立たせて、この昭和男尊女卑野郎と罵倒したいのを必死に抑えながら「わかりましたぁ〜」とできるだけ馬鹿っぽく答えてその場を去った。
そして向かったのはさっき「面倒臭いから一人で行って来いよ。ここで待っててやるから」とあきらを送り出し自分は近くの喫茶店でのんびりしていた先輩の元である。五条のくつろいでいる席まで行くと、五条はパフェを食べながら「おっ、お疲れ〜」と言った。
イラッとしたあきらは無言で向かいの席に座る。
「呪具どんなだった?」
「まだ受け取ってません」
「は?」
「大人の男にじゃないと渡せないそうです。門前払いされました」
「……へえ。じゃあ俺が」
「なので連絡して補助監督か誰かに頼むしかないです」
は?と不満げな顔をする五条が「俺がいるだろ」と言う。
「五条先輩は子供です」
「……」
それもクソガキというやつです、とまでは言わなかったものの不満は不満だったらしい。青い目がサングラスの奥からこちらを睨む。しばらくの沈黙の後、いきなりパフェの残りをかきこんだかと思うと、席を立った。
「行ってくる」
だから大人の男じゃないと駄目なんだって。と思ったが、ちょうど店員が注文を取りにやってきたので(あとあきらもパフェが食べたかったので)引き留めることができなかった。
「受け取ってきた」
それでちゃんと呪具を受け取って持ってきたのだから腹が立つ。どうだと言わんばかりの顔で、茶器でも入っていそうな大きさの風呂敷に包まれた箱を見せつけてくるのがまた憎らしい。図体しか見ていないのかと文句を言いたくなる。
喫茶店を出て歩いている五条に中身がどんなものなのか尋ねると、
「なんか箱だって。女と子供が近づくと死ぬって言ってた。だからオマエに渡さなかったんじゃねーの、あの爺さん」
「……へえ」
普通の人ならそうなのかもしれないが、あきらは耐性があるし身を守る力もそれなりにあるから、心配される必要はない。なんだか侮られているようで嫌だ。でもひとつ上の先輩は、頑なにその包みをあきらに近づけようとはしなかった。