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夜行バス/真希

夜行バスで東京まで帰ることになった。

地方に出張に来て、新幹線で帰るはずが、案外仕事が長引いたのだ。しかも明日は明日で午前中に東京に戻っていないといけなかったので、選択肢がこれしかなかった。四列の夜行バスをとりましたと伝えてきたときの補助監督は申し訳なさそうにしていたが、真希自身は体が丈夫だし、あきらも初めて乗るだの何だのではしゃいでいたので、そんなに負担だとも思わなかった。
あきらを窓際に座らせて、一応周囲を警戒はしつつ、一晩を過ごす。

早朝の東京駅に放り出されて、久しぶりだな、と真希は思う。こうして東京に来るのはこれで二度目だ。
一度目は、あの家を出てすぐのことだった。
ろくに小遣いも与えられていなかった真希には他に手段はなく、着いてさえしまえばどこかの目隠しバカがどうにかしてくれるだろうとわかってはいても、不安はあった。何の店も開いていない、人もいない、明るいだけのこの駅に、真希は一人でやってきた。

「夜行バス、結構楽しかったねぇ」

まだ眠そうな顔をしているあきらが笑う。

「そうか?」
「ちょっと体痛いし、お腹空いたけど」
「狭いからな。……どっか入るか」
「そうしよー」

今日の真希は一人ではないし、この時間に開いていそうな店の場所の検討もつく。昔感じた心細さは、もうすっかり消えていた。