※学生時代
硝子と二人で部屋飲みをしていたら、昔のマンガを読んでいて見つけた結婚相手の顔を見るおまじないを実行しようということになった。すぐそこに来ている零時に間に合うようにわあわあ騒ぎながら洗面器を用意して水を張る。部屋の電気を消し、安全剃刀を口にくわえたあきらはどうせそんなことは起こらないとわかっていながら洗面器をのぞき込む。
零時を過ぎた。
「どう?」
硝子が尋ねてくるが、当たり前に顔など見えない。それでも一応しばらく目を凝らしていると、ふと、水面に映る自分の髪がなんだか白くなったような気がした。
「うえっ!?」
びっくりした拍子に剃刀が洗面器の中に落ちる。「なんか見えた?」と首を傾げる硝子に向かって、ぶんぶんと横に首を振る。
「見えるわけないって。ちょっと足がつりそうになって驚いただけ」
「なーんだ」
「ただのおまじないだしね」
まあそうか、と納得した様子の硝子が電気をつける。洗面器の水をシンクに流しながら、あきらは考えた。
そうだ見間違いに決まっているのだ。ないないあり得ない。大体こんなことで結婚相手なんてわかったら誰も苦労はしない。
そう自分に言い聞かせつつ、ごまかすようにお酒を煽るあきらはこの時まだ知らなかった。明日地方出張からこちらに帰ってくる五条が、原因のわからない傷をその頬につけていることを。