「国近」
「んー?」
「賭けしようよ」
国近とあきらは中学の頃からの友人である。
きっかけはゲームで、つまりは趣味友達。中学生にまでなってポケモンかよ、などと笑ってきた連中のことは無視して、お互い厳選に厳選を重ねたパーティで対戦に励み、時に勝ち時に負けるいいライバルであった。
もちろん他のゲームにおいても同じだ。二人はなかなか趣味があったから、休日などはよくお互いの家に行ったりして、ゲームで遊んだり、ゲーセンに行ってみたり、とにかくゲーム漬けの友人関係を築いていた。この年頃によくありそうな恋バナなどで盛り上がったこともない。
国近はいつの間にかボーダーなんていう立派な組織に属していたのだが、それでも二人の関係は変わらなかった。ただ国近が買うゲームの本数が増えたくらいのものである。
今日もいつもと同じように、二人で並んでゲームをしていたのだ。
楽な部屋着に着替えて、手にはゲームのコントローラーを持ち、二人はお馴染みの格闘ゲームで、何度目かの対戦を始めようとしているところだった。
「賭け?」
「そう。ただやるだけじゃつまんないから」
国近があきらの方をちらりと見た。それを視界の端で捉えながら、あきらは画面を見る。どのキャラクターで対戦するか迷って、カーソルを動かしていた。
「いーけど、」国近が言う。「何賭けるの?」
そうだなあ、とあきらが手を止めて考えた。一端画面から視線を外して、膝を立てて座る国近をじいっと見た。
「……よし」
「思いついた?」
「うん。胸にしよう」
「むね?」
「私が勝ったら国近の乳を揉む」
言うなりコントローラーから手を離し、手をわきわきさせてにやりと笑う。揉みがいがありそうだしね、と続けるあきらの言葉は変態じみていたが、女同士ならまあセーフだろう。国近が頷くと少し目を見開いていた。自分で言い出したくせに。
「あれ、いいの?」
「うん。いーよ」
「ふーん……で、国近が勝ったら、どうする?」
「そうだなぁ……」
今度は国近が考える番だった。腕を組んで、うーんと唸り、あきらを見て──よし、とこれまた先ほどのあきらのように。
「チューにしよう」
「……チュー?」
「あきらの胸は揉みがいがないしー」
「……」
「あっ怒った?」
じっとりと半目になってあきらが国近を見た。えへ、とごまかして、かわいらしく小首を傾げる。
「だめ?」
「……いいけど」
「やったぁ」
大げさにガッツポーズをする友人を後目に、あきらは画面に向き直って、迷いなく一人の女性キャラクターを選択した。あきらにとって使い慣れた、お気に入りのキャラクターである。
国近も続いて、コントローラーを取り、空手の胴着を着た、一番よく使う男性キャラクターを選択した。
二人とも本気だ。負ける気は毛頭なかった。
フィールドを選択する。画面が切り替わり、あきらと国近が揃って姿勢を正す。
「勝ってその無駄にでかい乳を揉む」
「勝ってチューする!」
過去の戦績を鑑みるに、実力的には互角だ。どちらが勝ったっておかしくはない、のだが。
あきらが勝つにしろ国近が勝つにしろ、結局乳は揉むしチューもすることになるような、そんな気がちょっとだけしている、二人である。