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初めてがほしい国近

あきらに彼氏ができたらしい。いつもよりかわいくみえる、幸せそうなあきらに報告されて、国近は心の底からよかったと思ったし、祝福もした。それは本当に本当なのだ。けれど、同時に考えたことがある。

「ねえあきら、どこまでしたの?」
「ど!? ……どこまでもなにも、昨日付き合うことになったばっかだし……」

不意打ちをくらったあきらの顔がだんだんと赤く染まっていく。「手はつないだ?」聞けばうん、と頷いた。
それくらいならいいのだ。だって、国近もあきらと手をつないだことはあるし。ぎゅっと腕にまとわりついて歩いたことも何度だってある。

恥ずかしかったのか、視線をついと逸らしたあきらにそっと近づいて、内緒話をするときのように、国近は声を潜めて問うた。

「ちゅーは?」

返事は長い間をおいて返ってきた。

「…………まだだよ」
「そっか、よかった!」

え?と不思議そうに首を傾げたあきらに、にっこり笑いかけてから、国近は距離を詰めた。あきらが目を見開く。

あきらの幸せを祈る気持ちに嘘などひとつもないけれど。でも、初めてはとても大事なものだから、大切なともだちであるあきらの初めてが、できるだけたくさん、国近は欲しかったのだ。