佐鳥がよろよろと、ソファーに座って本を読んでいたあきらの前の床に座り込んで、膝の上に伸びた。あきらがうおっと本を浮かせる。こら佐鳥、と非難じみた声を向けてみるものの、佐鳥はそれを無視して、
「あきらさん。あきらさんはオレの、どこが好きですか……」
と言った。腰に抱きついて顔を腹に押しつけているせいで聞こえ方ははっきりしないものだったが、それでもわかるほどに、憔悴している。弱々しい。
本を読むのを邪魔されるのは好きではないが、あまりにも落ち込んでいるようだったので、冷たくあしらおうという気持ちは少しも沸いてこなかった。
そもそもあきらはこの佐鳥という男を、よっぽどのことがない限り粗末には扱えない。
恋人なのだ。惚れているのはあきらばかりではあるまいが、まあ、弱みではある。
「なに、どーしたの」溜息は堪えておく。あきらは本を傍らに置くと、茶色の頭をゆるゆると撫でた。
「いいから答えてください……あきらさんは、佐鳥のどこが好きなんですか」
えー、とあきらが渋ってみせると、佐鳥が顔を上げて、きっと睨んでくる。上目遣いにしか見えないし、長い間維持されることはなくすぐにふにゃっとしてしまったので、別に怯みはしなかった。
人に肯定して欲しいと感じる時は、確かにあるよなあと、自分を見上げてくる佐鳥を撫でながら、あきらは思う。
落ち込んでいる理由はしゃべりたくはないようだけれど、そんなものなくてもあきらは佐鳥の望んでいるものをあげられるのだから、ここは聞かないでおくことにして、あきらは両手で佐鳥の頬を包みこんだ。
「そうだなあ」
少し顔が緩んだのが手のひらに伝わって、ふふ、と笑う。
「──あ、そうだ。顔」
「……顔!?」
あきらの言葉に、佐鳥がとてつもないショックを受けたという顔をした。
あきらは構わず、ぐにぐにと佐鳥の顔をもみくちゃにして遊びながら、「柔らかいし」と続けている。
「顔がタイプとかでさえないんですか……」
佐鳥が泣きそうな声を出した。
あきらは愉快そうに笑って、指で鼻を押し上げたりして遊ぶ。誰かに見られたら、仮にも広報担当の顔になんてことをとでも言われそうな光景である。
「うん、おもしろいってのもあるね」
「あきらさん……」
「あはは」
もういいです、と今にも口から出てきそうなタイミングで、あきらはふっと体を屈めて、ふてくされている佐鳥の額に唇を落とした。
佐鳥が驚いて、ぽかんと口を開く。
「え、え、あきらさん、」
ちゅ、と小さく音を立てながら、今度は頬へ。次はさきほど無茶をした鼻の頭。
何度も何度も繰り返すうちに、佐鳥の顔はだんだん、嬉しそうにとろけてきた。
「……元気出てきた?」
こくこくと頷く。うっすら顔が赤いし、瞳がきらきら光っている。
「それならよかった」
あきらはにっこり笑って、仕上げとばかりに、佐鳥の唇にそっとそれを重ねた。