C級のブースでごろごろしていたら対戦を申し込まれた。脇のモニターに表示されたのは123、3750、バイパー、という簡単な情報である。
「C級かあ」
ふうん、とあきらは呟いて、どうするかを考えた。
訓練生とはいえ三千点も後半にさしかかれば、正隊員との差はそう大きくない。違いはせいぜい使えるトリガーの数くらいだろう。それにわざわざこうして正隊員であるとわかっているあきらに挑んでくるのだから、ひょっとすると腕に自信があるのかもしれない。
ポイントはあくまで目安にしかならないことをあきらはよく知っていた。C級になってからの期間や初期値だって、画面からはわからないのだ。
「……よし」
いいや。やってみよ。
モニターに指を近づけて、対戦を承諾する。
訓練生に勝ったってポイントは取れないが、そこはあきらにとって大した問題ではなかった。どうせ暇だし。退屈が少しでも、紛れたなら重畳だ。
「あ」
「あ」
コンピューターの作り出した嘘の街で、向かい合ったのは知っている顔だった。出水公平。ついこの間入ってきた新人の一人である。
「高遠か」白い訓練服を着た出水が、にやっと口端を持ち上げた。あきらが首を傾げる。
「私のこと知ってるの?」
特に関わった覚えがなかったので、不思議だった。
あきらが尋ねると、出水がぱちぱち瞬きをしてから、不満そうにむっと眉を顰めた。
「隣のクラスだろ」
「……そうだっけ?」
「はあ?そんなんもしらねーのになんでおれのこと知ってるわけ」
「えーと、トリオン量がボーダーでトップクラスだって、うちの隊長が」
少し目立つ隊員がいると、すぐにその噂が駆けめぐるような組織である。待機時間の暇つぶしに話されたそれと、ラウンジで指さされた明るい色の頭をあきらは覚えていた。そういえば学校でも同じ色の髪を見た気がするが、特に興味がないので確かめようとも思っていなかった。
「……あっそ」
不機嫌そうな顔のまま出水は言って、慣れた様子で利き手であろう右手を掲げる。キィン、と耳鳴りに似た音が鳴り、見たことがない大きさのキューブが手のひらの下に生まれた。
トリガーの性能は使用者のトリオン器官の性能に比例する。出水のトリオン量が頭一つ抜けているという話は本当だったんだな、とあきらは密かに納得した。
腰のホルダーに刺さったレイガストの柄を取り出し、淡く光る刃を作る。
『──ランク外対戦、開始』
「出水が勝ったら……正隊員になるのか」
一歩踏み出し、レイガストを体の前に構えたあきらが言った。
「そういうこと」
「私が勝ったら?」
「んー……。そーだな、ジュースでもおごってやるよ」
大小に割れたキューブを従えて、出水は好戦的な笑みを浮かべた。地を蹴って弾幕のただ中に向かいながら、自信のある人間の顔っていうのはすがすがしいなあと、そんなことをあきらは思った。