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佐鳥の顔はやわらかい

「やわらかいなぁ~」

あきらはその白い手をもって佐鳥の両頬を包み、ぐにぐにと動かして遊んでいる。
うひゃあだのあきらさんだの言葉を連ねる佐鳥と、それには答えず無心に遊ぶあきらに、さっきまで一緒に談笑していた木虎ははぁと息を吐き、時枝は、あきらの襲撃に驚いて佐鳥が落としかけた缶ジュースを預かり、事の成り行きを見守っていた。

「あきらさん、ちょっと、」
「んー?」
「首が!」

ソファーの上に座っていた佐鳥は、立っているあきらに引っ張られ、首を伸ばす格好になっていて、それが少々苦しい。
わかっているのかいないのか、あきらは頬をいじる手はそのままに、ちょっと顔を寄せてきた。それにびっくりして佐鳥はなにも言えなくなる。

よしよし、まるで犬をかわいがるような調子で言ったあきらの吐息が、顔に届いた気がして、なんだか頬が熱くなってきた。

「佐鳥のほっぺは、もちのようだなー」

えい、と大きく一度つまんで、うりうりと遊び、やっと満足したらしいあきらは佐鳥の頬から手を離した。
解放されて惚けている佐鳥を見て、「なんかチューしたくなるおでこだね」ぽつりと言う。

「え、え、」
「はー満足した。模擬戦してこよう」
「あきらさん! チュー! チューしてくれても、いいんですよ!!」

さっさと歩き出したあきらの背中に、つい大きな声が出たのだけれど、あきらはひらひらと手を振るだけだった。もう用はないと言いたげである。

大声にぎょっとした他の隊員から視線を向けられて耐えかねた木虎が、「公衆の面前でやめてください」と苛立ち混じりに言った。「聞こえてないよ」時枝はこんな時でも、淡々としている。