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穂刈とやりたくない

家に来るか、と誘ったとき、あきらはパアッと顔を輝かせて頷いた。穂刈の両親は共働きだから、夜まで誰もいないことが多い、今日もそうだと言うと、へえそっかあと大して気にもせず答えた。穂刈の声が若干の緊張を帯びていたことに気づいていたかどうかはわからない。いや多分、気づいていなかったのだと思う。

部屋に入って上着を脱ぐなり、あきらはポンとベッドの上に座った。それはいつも通りのことだった。いつもと違うのは、穂刈の方だ。

「えっ、ええ、ほ、ほかり、どうしたの」

あきらは大きな目をいっぱいに見開いて穂刈を見る。

ぐっと肩を押し倒せば、あきらは簡単に寝転がった。いつも寝起きをするシーツの上に、あきらの髪が広がっている。
不思議そうに見上げる瞳にあるのはただの困惑だった。状況が理解できないのだろう。

「……なあ、いいか」

囁くように言って、穂刈はあきらの細い首筋に鼻を寄せた。
あきらのにおいがするから下腹のあたりに熱が溜まる。少し鼻先が触れると、びくっと大げさな反応を返した。

「穂刈……」

声が弱々しく穂刈を呼ぶ。どうした、と体を起こして見てみたらあきらはこの場に似つかわしくない青い顔をして、体をこわばらせていた。明らかに拒絶を表している様子に穂刈がびしりと固まる。
あきらが申し訳なさそうに、眉を寄せた。

「……やだって言ったら、怒る?」

さっきまで笑顔だったのに。あきらの目は不安そうに揺れていて、涙の膜さえ伺える。
そんな顔をさせるのは──穂刈の本意ではない。

「怒らない」

きっぱりと言って大きな手であきらの髪に手をやる。安心させるように数度撫でれば、ホッと息をついて、強ばりも段々とけてきた。
でも理由は欲しい、と付け加えると、目を少し泳がせて、こくりと決意するみたいに喉が鳴った。

「初めては、い、痛いって聞いて、その」
「…………怖いのか」

うん。遠慮がちに頷く。
初めては痛い、という話は穂刈も知っている。まだ割り開かれたことのない場所にそれなりの質量を持ったものをねじ込むのだから、それはそうだろう。血が出るぞーと仲間うちで聞いたことがあるし、痛い痛いってうるさいから処女は面倒だ、なんてことを言う奴もいる。
痛いのは女子ばかりなのだ。
男である穂刈がその痛みを知ることはできないし、和らげてうまく行為をするようなことができるとも思えない。

涙を湛えて見つめてくるあきらの頭を、さっきよりももっと優しく撫でた。身を乗り出して額にキスを落としてから、あきらの上から退く。ベッドの端に座って、寝転がったままのあきらを見た。

「わかった。待つ。お前がいいと思うまで」

途端にあきらが飛び起きて、穂刈の背中に抱きついた。うわーんほかりやさしいかっこいいだいすきとあらん限りの賛辞を唱えながらくっついてくるあきらの頭に、ため息とともに手を置いた。あきらの体は柔らかい。生殺しと言えば生殺しだが、まあ、これはこれで。