人が多いラウンジで、太刀川がC級らしい女子数人と楽しそうに会話をしている。女子の方が遠目にもわかるほど顔を赤く染めていたので、迅は「あれ、ほっといていいの」と眠たげな眼差しを正面にいるあきらに向けた。
「なんのこと」
タブレットを両手で支えるあきらは、さっきからずっと真剣な表情で誰かの戦闘記録を眺めている。前に座っている迅のことすら見ようとはしなかった。
「太刀川さん。囲まれてるけど」
少し大袈裟に教えてやると、やっと視線を迅の指す方向に向けた。横顔が少し黙り、けれど何の感情の変化も見せずに、またタブレットへと視線を戻す。画面に指を滑らせて、どうやら見逃した分を巻き戻しているようだ。
「嫉妬しないの」
「なんで」
「なんでって……あきらさん、太刀川さんと付き合ってんでしょ?」
「付き合ってるけど。あれくらい、別にどうとも」
余裕だなあ。
感心した迅が笑ってみせると、あきらはちらりとこちらを見た。ゆっくり瞬きをして、タブレットをテーブルの上に置く。すっかり冷めているだろうココアの缶を手に取った。
白い喉がかすかに動く。
「……太刀川はね、欲張りなの。かわいいだけじゃ物足りないわけ」
ゴン、と打ち付けられた缶の底が音を立てた。少し苛立った静かな声が続く。
「あいつと長くいようと思ったら、一つだけじゃ駄目なんだよ。すぐ飽きる」
「へえ?」
「ライバルっていうなら、あんたとか風間さんの方がまだ強敵だわ」
「……なんか嬉しくない」
「私だって嬉しくない」
言うなりまたタブレットを取り上げて、どこかの誰かの闘いに集中する。
「……太刀川さん、愛されてんなあ」
目の前の真剣な顔と、耳に聞こえてくる楽しげな笑い声。両方とも同じ人間のためには変わりないというのに、ちょっと笑ってしまうくらい対照的だった。