「諏訪ー」
「……」
「すーわーーっ!」
「うるせえ」
……つまらない。ものすごくつまらない。
本日は非番、まるまる一日の休みである。しかもあきらだけでなく、おつきあいの相手である諏訪も非番で、二人の休みが重なったのは実に二月ぶりのことだった。
年中人手不足のボーダーではなかなかないことだし、せっかくだから外に遊びに行こうよ、と提案したあきらに、諏訪はあっさり「ムリ」と返した。なんでも提出間近のレポートがあるらしい。本当は来んなとも言われたのだが、そこはなんとか押し切って、諏訪の住むアパートでくつろいでいる現在である。
「ねー、まだ終わんないの?」
「見りゃわかるだろ。おとなしくできねーんなら帰れ」
そっけない。そしてイライラしている。
真っ正面にノートパソコン、傍らに大学の図書館から借りてきたのであろう本を数冊積んで、プリントやらなんやらを見ながら、諏訪は煙草をふかしている。あきらが見ている限り、時々キーボードを叩いてはまた消し、の繰り返しで、終わる気配は全くしなかった。
つまらない。
「……」
のそり、とだらしなく寝っ転がっていた体を起こして、諏訪に近寄り、後ろから抱きついてみる。諏訪が「おい」と咎めたのを無視して、ぎゅうぎゅう体を押しつけた。キーボードの上にあった手がぴたりと止まる。
あきらは自分の体のやわらかさを充分心得ているし、それがどんな効果を目の前の男にもたらすかということも、よくわかっていた。
「なんかさー、いろいろ溜まってるから、考えがまとまらないんじゃないかって、思うんだよねえ」
「……お前な」
「どうでしょうお兄さん、ここらでちょっと、気分転換とか」
言いながら、あぐらをかいている諏訪の内ももに手を置いて、少し伸びた爪でジーンズの生地を引っかいた。びくりと身が震える。密着しているので、わずかな反応だとしても、隠しきれるものではない。くすりと笑ってやれば、諏訪が不機嫌そうに口を開いた。
「……責任とれよ」
「あはは。とるとる。身体で」
「頭でもとれ。後で手伝ってもらうからな」
「えー」
残念ながら頭の出来には自信がないので、あきらは言葉を濁した。
諏訪はハーッと大きな溜息を一つ吐いてから、煙草を灰皿に押しつけて。そしてやっと、あきらの方を向いたのだった。