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荒船と一対一

「えー。うっそうっそ、マジで?」
 

スナイパーは居場所を知られたら終わり。それが自分のところの隊長から教わったセオリーというやつだった。だからその通り、終わりにするためにあきらは狙撃がきた方向に向かって飛んだのだ。ビルの上には帽子を被った人影が逃げる暇もなく待っており、あきらはもらったと思って、スコーピオンを手に襲いかかった。これで終わりのはずだった。

「なんでなんで?なんであんた弧月持ってんの」
「……うるせえな」

シールドで防御される、それは想定内だった。予想外だったのはあきらを鋭く見据えた男が手にしていたイーグレットを捨てたことで、その手に弧月、アタッカー用の武器を、携えていたことである。
なぜだか変な持ち方をしているけれど、構え方でわかる。
──弱くない。少なくとも、苦肉の策、という風ではなかった。これは彼にとってこれ以上なく、正当な手段なのだ。

「荒船隊ってスナイパー部隊って聞いたんだけど」

爪先で地面をコンコン、と何の意味もなく叩く。
帽子の男はきれいな顔を訝しげに歪めて、「……模擬戦のデータでも見てれば知ってるはずのことだが」と言った。
じゃあ今頃桜子ちゃんあたりが解説してくれてるのかもなあ、とあきらは思う。けれど仕方ない。この空間に、あの思い切りのいい声は響かないのだ。あっは、とあきらが屈託なく笑う。

「じゃあわかんないや。私そういうのあんま見ないようにしてるから」
「ああ?ふざけてんのか」
「ふざけてない。本当の敵にはデータなんかないでしょ。だから邪魔なの。ほんとはスナイパーだらけってのもいらなかったけどこれは有名だからなー」

決して相手を侮っているわけではない。あきらはあきらなりに真剣で、自分を引っ張ってくれている隊長を困らせながらも、けれど認められてはいるのだ。無茶苦茶を許されている。だからなおのこと、勝利への責任が重い。こんなところで負けられはしない。
あきらは手の中に刃を作り出した。淡く光るそれが彼女の武器だ。

「他のみんなはもう落ちてるから、あとは私ら次第だね。お互いガンバロー」
「てめえ……」

お前の話し方ってどうにもむかつくんだよなー、としみじみ言っていた上司の顔が頭に浮かんだ。目の前の彼もどうやら怒りを覚えたようで、顔がますます険しくなった。逆手に持った弧月がぐ、っとタイミングを計るように少しだけ動く。
策を弄して動いても、結局最後にはこんな風に力勝負になることが、案外多い。そしてそれはあきらの得意分野だ。

「たぶん私が勝つけどね」
「クソが。……なめるなよ」

踏み込む足に力が入る。獣のように、二人は笑った。