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いつになるやら/当真

当真勇は訓練が好きだ。
もちろん動かない的に当てるような、やる前から結果のわかりきっているようなことをやるのは面倒だから適当にやったりそもそも参加しなかったりするが、自分で的を選べる、自分も撃たれる可能性がある、掩蔽訓練のようなものはそこそこ楽しくていい。

自分のお気に入りの、面白そうな奴だけ選んで撃つ。
撃たれた奴は訓練が終わった後に、撃ったのが当真だということを知る。
わかりやすく悔しがったりするような奴らを、からかうのが楽しいのだ。
 

「よー、あきら」
「…………」
「いいもんつけてるなあ」

あきらと呼ばれた女の白い頬には、赤いマークがあった。

撃たれた印はそれひとつきり、撃ったのは当然当真である。
陽気に声をかけたものの返ってくるのは鋭い一睨みだったが、当真は怯むどころか楽しそうに笑っていた。

「頬なんざ、実戦だったら即アウトだろ。ちょっと無防備が過ぎるんじゃねーのかぁ?」
「…………うるさい」

沈黙の後にやっと口を開けばその一言とは、全くかわいげのない後輩である。しかし当真に言わせてみれば、そういうところがちょっかいを出したくなる所以だ。

ぐりぐりと頬を人差し指で押してやるとうっとうしげに眉を寄せた。

虫を追い払うがごとき乱暴さであきらが当真の指を捕らえる。無駄に力を込めて戒めているが生憎痛覚は切ってあるので効果がない。

しばらく指をぎりぎり握っていたが、平気そうな当真を見てふとため息をついた。
なんだもういいのか、なんて口に出しながら手を引っ込める、と。

「……いつか」
「ん?」
「いつか絶対、私が当真さんを撃つ」
「おお」

当真の顔に喜色が滲んだ。
追いかけられるのは大歓迎だ。奈良坂もそうだが、実力のある人間に追われて、それでも逃げ切る。それができるのが当真勇であるという自負がある。
あきらの宣言はだから心地よいもので、思わず頭を撫でようと手が動くくらいだった。自分よりも随分小柄なあきらの頭に手が乗りそうになったその時、あきらがぽつりと言った。

「……そしたら私と付き合って」
「………………ああ?」

聞き捨てならないことを聞いた。気がする。

頭に置こうとして固まった当真の手を避けて、あきらはスタスタとどこかへ歩いて行った。

もう一度重ねて、当真がああ!?と声を上げる。
そこへいきなりポンと肩に手が乗り、驚いて振り返ると真顔の奈良坂がいた。

「当真さん」
「ちょっと待て今……」
「いいか。早く付き合いたいからといって、手加減でもしてみろ」
「……」
「俺も高遠も承知しないぞ」
 

どうしろと。