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猛犬三輪公

「猛犬だぁ」

うはは、とあきらはとても嬉しそうに笑った。月見と二人で眺めるモニターの中では、ついこの間月見のチームメイトになった少年が武器を取って戦っている。
目には憎しみ、腕は足はそれを発散させるためのもの、滅茶苦茶を許す彼の才能、本能。
きっとあの日が来るまでは、柔らかい笑顔を浮かべて幸せに暮らしていたのだろうに、今の彼は獣のように我を忘れて、自分からすべてを奪ったトリオン兵を粉々にしてやることしか考えられない。ひどい話だ。

そんな酷い話を笑って、あきらはポケットから取り出したらしい酢昆布をおもむろにかじり始めた。
いるかと言われたのだがにこやかに断っておいた。

「……あなたはどう思う?」

少年が月見の所属する隊に配属されてまだ少しも経っていない。色々な意味で難しい東隊の中で、一等言葉が通じないのが今の彼だ。普段は貝のように口を心を閉ざして、トリオン兵に向かうときだけ、感情を爆発させる。これでは、と月見は思う。これでは、戦術も何もない。

「東さんもさあ、大変だよねえ。変で、かつ才能があるやつばっか押しつけられて」

忍田さんもひどい人だ、とあきらがまた笑う。でも太刀川で手一杯だからしょうがないか、と続けた。

『……次を』

不意に暗い声が響いて、月見はモニターを見た。まだ頬の丸い少年が、空を見上げて、次の敵を乞うている。

「……どうしましょう」
「次のトリオン兵、放り込んでやればいいんじゃないの」

その気になれば無限の敵を生み出せる月見の白い指をあきらが見た。

「でもそれだと、いつまで経っても同じでしょう?」

目には憎しみ、手足はそれをぶつけるためのもの。それを可能にさせる才能。けれどそれだけでは困る。困るのだ。

核心は口にせずに、月見は意味ありげにあきらを見つめた。切れ長の目をきょとんと見返して、暫し黙ったあきらがにやりと笑う。

「……オーケー、了解」
「引き受けてくれる?」
「任せなさい。猛犬を躾けましょう」
「ええ」
「それで、そうだなあ。人間にするのは困るから、戦士くらいに、育てよう」

その方がたくさん殺せるって、私が教えてあげるとも。
 

『……月見さん、』

次を急かす苛立った声がする。
ただの猛犬の、そんなものが怖いわけがない。

無限を紡ぐことさえできる月見の白い指が軽やかに動く。あきらは手に持っていた酢昆布をぺろりと食べきって、鼻歌なんて歌いながら、トリガーを起動した。