命を懸けた仕事をしている。
それをあきらが本当のところで理解したのはこの冬のことで、なぜ理解したのかというと人が死んだからだった。大規模な侵攻があった、ネイバーが本部基地に乗り込んできた、無防備だった通信室が襲われて、オペレーターが六人死んだ。
六人。
知っている人もいたし、知らない人もいる。
ボーダーには殉職した人間の写真を集めた部屋がひっそりとあって、そこに新しい写真が増えた。まだ増えるかもしれない、そこに次に増えるのは自分かもしれない、こわい、怖いと初めて思った。
でもだからこそ、トリガーを手放せない。
「遠征組は慣れてんの」
敵を見ると震えるようになってしまった手のひらをぎゅっと握りしめて問う。出水はこちらをちらりと見て、すぐ視線を逸らした。横顔にはなんの表情もない。
「……まあな」
「古株の人たちも、慣れてる?」
「たぶん」
「私も、いつか慣れるの」
怖い。死ぬのは怖い。いざというとき抵抗できないのはもっと怖くて、だから戦いをやめるわけにはいかない。
いつかあの部屋に並ぶのは自分の写真かもしれなくて怖い。それだけならいい。でも並ぶのが、先輩の、友達の、出水の写真だったら?そんなことにも慣れてしまうのだろうか?
「こわい」
か細い声を掻き消すように、きいんと空気のはりつめる音がした。出水の手のひらの下に、淡く光るキューブがいくつも現れる。丸く溶ける。夜の闇の中、重い足音が響く方へ飛んでいく。
答えも慰めも、出水はどちらもくれなかった。
ひとこと
小部屋云々は売野機子さんの「MAMA」からです。