目の前に銃口があった。
鮮やかに戸惑いなく突きつけられた筒の中は暗く、命だとか気持ちだとか、全てを吸い込んでしまいそうに見える。丸腰の迅はつい両手を挙げて、降参の構えをとった。
「……あきらさんあきらさん、これ、安全装置は」
「つけてない」
「あ、やっぱり」
だって帰ってきたばかりだもん、といい年をしてあきらが幼い口調で言う。
「ただいま」
「おかえり。ところでこれ、物騒だから、下ろしてくれない?」
「嫌だ」
「えー……」
困った。
ぎらりと睨みつけてくるあきらの眼光は鋭く、ここでスプラッタが起きない確証がない。
全部知っているのだろう。あの場にはやってこなかったけれど。
「……迅」
あきらが口を開いた。なに、と聞いたが答えが返らない。
たっぷり間をおいたあとため息までついて、あきらが言った。
「たまにね」
──私、あんたを殺してあげたくなるよ。
哀れんでいるような、苛立ったような、たくさんの感情が入り交じった目をあきらはしていた。
その全てが自分のためのものかと思うと少し嬉しくて、微笑んでしまえばもっと険しい表情になる。
「なんで笑うの」
「後悔はしてないよ。これでいいんだ、あきらさん」
「……」
あきらが唇を噛んだ。痛そうだなあと思う。
自分の大事なものばかり切り売りするような迅のやり方が、あきらは気に入らないのだ。
あんたには何が残るのと、一度言われたことがある。
それより大事にしたい物があったのだと、どうしてわかってくれないんだろう?
「…………」
あきらの指が、くっと引き金にかかった。
頼りのサイドエフェクトは二つの未来を見せてくる。ひとつは唇を噛んだあきらが、ゆっくりと手を下ろす未来。もうひとつは。
それでもいいかなとほんの少し思って、迅はゆっくり、両の目を閉じた。