「腹立たへんわけではないねん」
腕を組んで眉間に皺を寄せたあきらが、おもむろに話し始めたので、いやなんの話ですかと水上は思った。だがここで話を止めると面倒なことになりかねない。深刻そうなあきらの顔を見つつ、はあ、と調子を合わせる。
「あいつな、やたらみんなにかわいいかわいいゆうやろ?」
ああイコさんの話な、と納得がいく。あきらは聞かせているわりに、水上の反応にはあまり気を止めていないらしく、眉間に皺をよせたまま考え込むように目を閉じた。ソファーの背にもたれて、ふー、と息を吐く。
「いちいち本気やゆうのもわかってるしな、実際みんなかわいいゆうてもええ気はせんで。鼻の穴に指つっこんでガタガタいわせたろかくらいは思うけど、思うけどな」
「なんかあるんですか」
「…………」
沈黙。少しして、口を開いたあきらの顔は相変わらず不機嫌である。かっと目を開けて、「だってな!」と大きな声を出した。
「あ、あいつ、うちのこともほんまに心の底からかわいいゆうねんもん!」
許してまうやろ、なあ!?と詰め寄ってくるあきらの頬がほんのり赤い。
のろけとか勘弁して欲しいっすわーと正直に言ってやるかどうか、迷った水上であった。