「生駒っちにやきもちをやかせたい?」
「うん。今のところ惨敗やで。ボーダーの男片っ端からほめちぎってみたけど怒るどころか同意や同意」
「おれのことはどんな風に褒めたの」
「迅は褒めてないかな」
「えー……」
「こないだのたこパでこれみよがしに海にたこ焼きアーンしたったけどこれもあかんかった」
「ほう」
「かくなる上は」
「上は?」
「わからん…………」
人の少ないラウンジで、テーブルに突っ伏したあきらが唸った。向かいのイスに座る迅などは、別にやきもちなんてやかせなくても、生駒は自分の正直な気持ちを隠したりしないのだし、いいんじゃないかと思うのだが、乙女心はそう簡単にはいかないのだという。
「……うちばっかやきもちやいてんの悔しいやろ」
ということらしい。
机の上で腕を伸ばして、ごろごろ転がりだしたあきらから自分の缶ジュースを守りつつ、迅はうーんと考えた。
あきらの姿に重なるように、少し視えるものがある。
「あ」
「うん?」
不思議そうに自分を見上げたあきらに、なんでもないとごまかしながら、迅はにっこり笑った。
「いい考えがあるよ」
え、なに!?と藁にも縋るふうのあきらが起きあがる。迅はそのあきらにすっと顔を近づけた。いきなりの接近にあきらは少し驚いたが、意味ありげに微笑まれたので逃げるのはやめた。
「なんなん~もうなんでもええからゆうてや」
「まあまあ」
内緒話をするように、迅はあきらの耳に口を寄せた。
「なに……」
「あきら!」
いきなり大きな声で名前を呼ばれて、あきらの肩が跳ねた。振り向くとそこには生駒がいて、しかもどうやら珍しく怒っているようだった。
「え、どうしたん」
「どうしたもこうしたもないわ!お前ら近いねん!」
「ごめんごめん」
「あきらに手ェ出したら決闘やからな、決闘!」
「へ」
あっという間に近寄ってきた生駒が、状況のあまりわかっていないあきらの腕を引っ張って立たせる。そのままどこかに連れて行こうとする生駒には逆らわず、あきらはぽかんとした顔を迅に向けて引きずられていた。
思わず笑いがこみ上げる。
「……え、あかん、迅、めっちゃかっこいい……」
「ハァ!?なんやて!?」
ついには抑えることもなく、あっはっはと声をあげてしまった。
友人には怖い顔で睨まれたが、まあたまにはこういうのも、平和でいいだろう。