Skip to content

協力してよ/太刀川/男主

「月見さんは美しい」

智がぽうっと夢見るような顔をして言うものだから、正面に座る太刀川は呆れて妙な顔をした。「そうかあ?」と疑わしげに問うと、智がバン!と机を叩いて「お前はありがたみがわかってない!」と怒った。

智が言うところの美しい月見さんとやらは、太刀川にとってはただの幼なじみである。小さい頃から比べたらそりゃあ女になったなあとは思うけれど、それ以上の感想など浮かばない。あまり客観視が得意なたちでもないので、世間から見た月見蓮をうまく想像することもできなかった。だから拳を握りしめて語る智の勢いはただただ不思議なものとして映る。

「月見さんは美しい!年下なのに敬語使いたくなるくらい」
「あっそ」

適当に返すとぐんと肩を落とした。「お前が羨ましい」智が呟く。

「なんだよ……たまたま近くに住んでただけだろ」

その幸運が羨ましいんだよ、と暗いトーンで言われる。それきり黙り込まれて、太刀川はもさもさした自分の頭をかいた。仕方ねえなあ。

「……なんか協力してやろうか」
「!!」
「連絡先とか、質問とか」
「た、たちかわ」
「今日ちょうど三輪隊いんだろ。待ってろ、パンツの色でもなんでも聞いてきてやるよ」
「いや待て太刀川」

立ち上がりかけた太刀川の腕を智が真顔で掴む。途中まであった感謝の色が見えない。

「パンツの色はいらねーよ」
「なんでだ」
「いやこっちがなんでって聞きてーよ!?ただの変態じゃねーか!そうじゃなくてこう、好きな人はいますかとか!好みのタイプはとか!」
「ええ……」
「……お前ホントは協力する気ないだろ」
「……まあ面倒だなとは思ってる」

正直な思いを太刀川が打ち明けると、智が大きなため息をついて机に突っ伏した。なめくじかなにかのような、じめっとした空気を醸し出してぶつぶつ言っている。

「……だってなあ。見返りもないし」
「レポート手伝ってやってんだろ……」
「それはそれで。やっぱりここはもっと楽しいことだろ」
「楽しいこと?」
「ランク戦」

言い切った太刀川に今度は智が呆れた目を向けた。お前ほんとそれしかないのな、と言いたげな顔をしている。

「やんねーの?」

けれども、背に腹は替えられぬ。

「……やる」
「よし」

そうと決まれば。
二人でのろのろ立ち上がり、のそのそと連れだってC級のブースに向かう。歩く途中太刀川が「お前が勝ったら好きなタイプ。俺が勝ったらお前の名前出した上で今日のパンツの色聞きに行く」と言い出したので、智はやっぱ頼る相手間違えたと真っ青になった。まったくこのA級一位ときたら。