※呪術全然関係ありません
※深く考えずに読んでね
「全く、腹が立つほど優秀だね」
苦笑する夏油の前では、にゃぁ、と得意げに鳴く大きな猫が行儀よく座っている。
長くてふわふわの白い毛に、きらきら光る青い双眸。
次の瞬間には猫は消え、代わりにスラッとした体躯の五条悟が、先程の猫のような得意げな表情で口の端を吊り上げていた。
部屋の照明に透ける銀に近い白の髪、悪戯っぽく輝く青い瞳が夏油を見て笑う。
「オマエもあとちょっとってとこだろ」
「まあね」
フフ、とこちらも悪戯っぽく笑い、夏油はパタンと持っていた本を閉じた。
禁書の棚からこの古びた本を借りてきたのは夏油である。
外面のいい夏油は五条と異なり、問題児として数えられながらもこの学校の一部教師に異常に気に入られているから、勉強のためとか興味があるとか適当なことを言って一筆書いてもらうのはお手の物だ。思いついてからまだ日が浅いにもかかわらず、夏油の手には望んだ通り、アニメーガスの理論について記した本があった。
興味があるのも、勉強のためというのも別に嘘ではないので罪悪感はない。夏油も五条も勉強はしっかりしている。
その方向が机上ではなく、実践であるというだけだ。
入学三日目の探索で見つけて以来、二人の秘密基地のようになっている必要の部屋の中で、ここ数日二人は危険な変身術に挑んでいた。
「俺もう戻るけど、傑はどうする?」
習得を果たしてご機嫌の五条が尋ねる。私はもう少しいるよ、と夏油が返すと、わかったと頷いた。
「じゃ、後で」
一言の後そこには再び白い猫の姿があり、とてとてと出口の方へと向かっていく。
「気をつけて」
笑いを含んだ夏油の言葉に、猫が答えてにゃあんと鳴いた。
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やることもない昼下がりだったので、適当に学内をブラブラしていた。あても無く廊下を歩いていた高遠あきらは、ふと猫の鳴き声を後ろに聞いて立ち止まる。
振り返るとそこには、白い毛並みを輝かせた大きな猫がいる。猫はあきらの方に軽い足取りで近づいてくると、ぺたんとそのまま廊下に座り、あきらを見て愛想よくにゃあんと鳴いた。
この学校には、猫をペットとして持ち込んでいる生徒が結構多い。見たことない猫だな、誰かの飼い猫かな、と思いながら、誘われるままにしゃがみこむ。
青い瞳でこちらを見つめる猫に、首を傾げて問いかけた。
「触ってもいいの?」
「にゃ」
尻尾がぽすんと床を叩いた。許可らしきものをいただいたあきらは少し笑って、猫に向かって手を伸ばす。
顎の下や体のわりに小さな頭、目と目の間など指で擽るようにしてやると、青く綺麗な目が気持ちよさそうに細くなった。体をすり寄せてあきらの膝に手を乗せ、じいっとこちらを見ている。
「……もっと触っていいの?」
「にゃあ」
随分人懐っこい猫だ。そしてやっぱり人の言葉がわかっている。魔法界の猫は魔力を帯びていることも多いから、大して珍しいことではない。
猫は上機嫌にごろんと転がると、こちらに向かって白い腹を見せてくる。理由はよくわからないが、あきらのことが随分お気に召したらしい。
ではお言葉に甘えて、とふわふわの毛を遠慮なく撫で回す。
気持ちがいいのか目を細めてリラックスしている様子の猫に気を良くしながら、あきらはなんとなく視線をその下半身に移した。
「あ、オスか」
「…………」
別に猫がメスだろうがオスだろうがどうでもいいのだが(だって猫だし)、つい呟いた言葉を聞いて、猫が何故かビシッと固まる。
突然動かなくなった猫を心配して、どうしたの、と尋ねると。
「フギャアア!!」
毛を逆立てた猫はものすごい速さで体を起こし、呆然としているあきらを置いて、一目散にどこかへ駆けていってしまった。
「…………何だったの?」
と首を傾げてみるが、答えるものはもちろんいない。
寮に戻って談話室でだらだらしていると、夏油がニヤニヤ笑いを堪えながら帰ってきた。
続いて顔を顰めた不機嫌そうな五条が入ってきて、あきらは二人に向かってお帰り、と声をかける。夏油は答えたが、五条は無言のままあきらの顔さえ見ようとしない。
機嫌でも悪いのだろう。直接喧嘩を売られない限りは放っておくのが一番だ。
しかしその髪色を見て思い出すことがあったので、あきらはぽんと手を打った。
「そういえばさあ」
さっき猫が、と夏油に向かって話し出す。
「白くて大きな?」
「え、そうだけど。もしかして夏油も見たの?」
先を言われたあきらが目を丸くすると、夏油はまあねと頷いた。
「五条みたいな目の色してて」
「オスの、だろう?」
「そうそう!」
「傑!」
途端に笑い出した夏油に向かって、何故か怒っているらしい五条が顔を真っ赤にしながら、親友の名前を叫んだ。