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桃に言っとく

「あの一年、何なの」

久しぶりに会った桃はちいさな顔に手当の痕を残して、あきらをじっとりと睨んだ。睨まれたあきらはというとにこにこと笑い、かわいいでしょうと返す。

「ぜんっぜんカワイくない」

その声こそかわいらしくはない、低い声だった。桃らしくもない。あきらはまた笑いがこみ上げてくる。

あきらが出なかった交流会の一日目が、つい先ほど終わった。
三年のあきらは、停学をくらっている同級生とは違って出場資格があったけれど、結局は出なかった。
ちょうど昨日、五条に声をかけられたのだ。

「悠仁を出したいんだ」

いつもの軽い口調で、数回だけ会ったことのある死んだはずの後輩の名前を出され、あきらは数回瞬きをしてから「いいですね」と満面の笑みで答えた。
そして今日を迎えた。
同級生の生存というサプライズを喰らった後輩たちの反応は思った通りの面白さで、あきらはとても満足だった。その後も教師たちと一緒に画面越しでみんなの奮闘を見ていたから、野薔薇と桃が、一対一で戦っていたことも知っている。

「野薔薇ちゃん、面白かったでしょ」

穏やかににこにこ笑うあきらに、桃が眉を顰めた。生意気すぎだの口が悪いだの躾がなっていないだの、桃がぶちぶち文句を言う。
確かに野薔薇は口が悪い。けれどその裏に、厚い情を隠していることをあきらは知っている。どこまでもまっすぐな子なのだ。
目の前に現れた悠仁に、涙ぐんでいたのをあきらは見ていた。

「あきら、アンタ後輩の教育くらいしっかりしなさいよ」
「してるよー。鍛えてるよ?」
「そうじゃなくて、態度の方」
「えー、今回は仕方ないって」
「は?」

桃が片方の眉をつり上げてあきらを見た。あきらは表情を変えず、口を開く。

「先に虎杖くん殺そうとしたのは京都校だし」
「…………アンタ」

顔をひきつらせて一歩後退りした友人に、あきらは花が綻ぶような笑顔のまま、「あの子、私の後輩でもあるんだよ」と言い渡した。

「……ウ~ン……」

困った風の桃が歯切れ悪く答え、明後日の方向を向いた。明日も安心できないらしいな、と微笑みの裏であきらは考える。

「次はないからね」

野薔薇や恵だけではない。せっかく生き返ってくれた大事な後輩に手を出されて、あきらだって、結構怒っているのだ。