起きろっ!と、怒号とともに頭を思いっきり叩かれてあきらは飛び起きた。叩かれたところをおさえて起きあがり、乱暴に起こしてくれた犯人、庵歌姫を睨みつける。
同期の友人はいつもの通り動きにくそうな袴姿で、こちらも負けじとあきらをじっと睨んでいた。
「何すんの」
「うるさい。いつまで寝てるつもりよ」
歌姫はあきらと接するとき大体最終的には怒っているけれど、今日は最初から怒っているらしい。心当たりはなくもないが、なんとなくどれも違う気がする。
頭をさすり、ぶちぶち口の中で文句を言いながらあたりを見回した。見覚えがない部屋だ。
ベッドとソファー、それからテーブルくらいしかないところを見ると、どこかのホテルのように見える。その割には窓がないが。
「ここどこ?」
当然の疑問を投げかけると、「知るか」とまたキツい言葉が飛んできた。さすがのあきらもむっとする。
「歌姫、私今日はまだ何もしてないでしょ。八つ当たりはやめてよ」
「…………」
眉間に皺を寄せた歌姫が、苛立ちを逃がすようにため息を吐いた。
あーそんなに力込めたら皺残っちゃうよとは思ったが、歌姫に正当な怒りの理由を与えるだけなので黙っておく。
そして少し落ち着いたらしい歌姫は、一枚の紙をあきらに寄越した。
受け取った紙をなんだなんだ、と開いてみて、一度閉じる。
歌姫の方を見る。目が合う。
「…………」
「…………」
しばらく見つめ合って、あきらは手元の紙に視線を落とした。
もう一度、今度はゆっくりと開き、三回ほどその短い文章を読んで、やっと「はあ!!!?」と声を上げた。
「何これ!?セックス!!?」
「声が大きい!!」
「私らどっちも穴しかないじゃん!!」
「下品!!」
青筋を立てた歌姫に平手で頬を打たれたが、驚きが勝ったあきらは大して痛みを感じず、「棒がないよ!!?」と続けた。歌姫の本日三回目の攻撃は、なかなかきつい一発だった。