Skip to content

好きじゃないけど

もう随分慣れた地下の部屋。対外的には死んでいる学生とソファーに座って弁当を食べていたら、悠仁がとんでもないことを言い出した。

「あきら先生ってさ、五条先生のこと好きだったりしねぇの?」
「……」

虎杖悠仁は疑問を率直に口にするとても素直な男子高校生で、かつ今日見たのはベッタベタの恋愛映画だったとさっきまで話していた。
こんな突拍子もない質問をしてきたのはそのせいだろう。

不意を突かれ、一瞬放心したあきらだったが、すぐ我に返って口を動かす。食べ物を飲み込み、そして机の上にあったペットボトルに手を伸ばして、ゆっくりと飲んだ。その間にも悠仁はきらきらと期待に満ちた眼差しを向けてきて、何がそんなに面白いんだとあきらは思う。

「……一応聞くけど、なんで?」
「だって先生イケメンじゃん!背も高ぇし。あと最強らしいし」
「……」

五条のことをここまで素直に誉める人間は珍しい。本人が聞いたらさぞ嬉しがって調子に乗るんだろうなと想像するだけでも若干疲れた気持ちになりながら、あきらは「好きじゃない」と答える。
嘘ではない。
五条との関係は、そういうものではなかった。これはきっとあきらだけではなく、もう一人の同期、家入硝子も同じだろう。

「そっかぁ」

何故か不満そうな悠仁に呆れたような息を吐く。

「……けど、」
「けど!?」

再び希望を見出した悠仁が身を乗り出した。その勢いに苦笑しつつ、あきらは続けた。
 

「──好きじゃないけど。大事だよ」
 

結構ね、と最後に付け加えると、悠仁はおお〜と感心したような声を上げた。