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気づいてる家入

※学生時代

 

あきらの頬はやわらかい。
手始めにうにっとつねってやると、あきらは驚いたように瞬きをして、いきなりそんなことをしてきた硝子を不思議そうに見た。らに?と喋りにくそうな発音で尋ねてくるのを無視し、もう一方も同じようにすれば、ますます混乱した様子でぱちぱちと長いまつげが瞬く。

「あきらさー」

言いながら、硝子はここ最近のあきらの言動を思い返している。
日焼け止めはべたつくからヤダとぶちぶち言っていたのに、ある日を境に持ち歩き、外にいるときはこまめに塗り直すようになった。服の趣味が落ち着いたものに変わった、少しだけだが化粧をするようになった。夏油の実習にやたらついていきたがるようになったし、たまに先生に直談判してまで後輩の任務を横取りしている。硝子にはわからないが、よく組み手の相手をしている五条たちによると、強くなってもいるらしい。

変化は誰だってわかるくらい明確なのだ。それなのに、一番近くにいたはずの硝子に、その原因について思い当たることがない。それがなんだかとても悔しい。

何も知らないあきらは、頭の上には疑問符を浮かべるばかりだ。ただなんとなく怒っているということだけは感じ取ったらしい。

「ひょーほ?」

どうしたの?と言いたそうな顔のあきらに、それはこっちの台詞だ、と硝子は思う。
すうっと責めるように目を細めた。
 

「なんか、私に隠してることあるでしょ」
 

そう言うと、あきらは露骨に困ったような顔になる。図星なのを隠す余裕もないようだ。

頬から手を離すと、やっとまともに喋れるようになったあきらが、少しだけ落ち込んだような声で、「きっと信じないよ」と決め付けた。