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九十九と追いかけっこ

見知った気配を捉えた。もしや、と思って向かってみると、バイクに乗って今にも去っていこうというちゃらんぽらんの後ろ姿がある。久し振りに日本に戻ってきたらしい相手に向かって、あきらは青筋を立てつつ声を張り上げた。

「由基さん!」
「げっ」

ヘルメットを被った九十九由基は、あきらを見るなりいかにも嫌そうな声を出し、そのままバイクを走らせた。逃げる気だ。

「待てこら!」

怒鳴るのと同時に術式を発動する。数年ぶりの追いかけっこの始まりだった。

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始まりの地点からは少し離れ、めでたくあきらの式神でぐるぐる巻きになった由基は、ふてくされたような目つきでこちらを睨んだ。
もちろんこの程度の拘束ならいつでも抜け出せるのだろうが、それならそれで次の手がある。逃げたって無駄だ。九十九由基は海外を好きにプラプラしているちゃらんぽらんの特級術師だが、高遠あきらは日本で毎日真面目に働いている特級術師なのだった。

「も〜、何」
「何じゃないですよ。いい加減ちゃんと仕事してくれませんか」
「してるって」
「してないからあんたの分の仕事もほとんど私に回ってくるんでしょうが!」

ただでさえ人手不足なんですよ!と続け、ばしんと地面を叩いて怒ると、由基がそっぽを向く。

「私にはこの世を呪霊のいない世界にするっていう大義があるんだよ」
「……その大義に何か成果はあったんですか」
「…………ない!」
「堂々と言うな!!」

つい頭を叩くと、パシンといい音がする。ほんとに中身入ってんのかと、いっそ訝しくなってきたあきらだった。