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デートしてやろっか/五条

※学生時代

 

共用スペースのソファーでだらだらゲームをしていると、不意にひま、という声が聞こえた。ちらりと視線をやれば同じくゴロゴロしていた一つ上の先輩が近くで息を吐いている。めんどくさいな、とあきらは思った。

「デートでもしてやろっか、あきら」

案の定五条はあきらが微塵も望んでいないことを恩着せがましく言い、にやっと笑ってこっちを見ている。移動する手間も惜しんで集中しているのが見えないのだろうか。もうすぐこのステージもクリアなのだ。キャラクターを操作する手は止めないまま、「いいです」と平坦な答えをあきらは返した。

「よしじゃあ映画な」
「いいって言いました」
「買い物は?」
「金銭感覚合わないじゃないですか」
「わがまま」
「どっちが」
「生意気」

だから、どっちが。
画面の中のキャラクターがほいほいと軽快に障害物を超えていく。人生もこんな感じだったらなあと思っていたら、突然手の中からゲーム機が消えた。上にひゅっと移動したそれを持っているのはやっぱりひとつ上の先輩で、あきらは障害物のように背の高い五条の、整った笑顔を恨めしげに見上げる。

「先輩と話してる時にゲームやってんじゃねえよ」
「話してるつもりがなかったので……いたっ」

叩かれた頭を押さえると五条は「出かけんぞ」と言う。あきらのゲーム機は人質がわりに大きな手の中にある。拒否権はどうもないらしい。

「横暴……」

睨みつけながらぼやくと、聞こえないフリをした五条はやっぱ映画だなと機嫌よく言った。