ピアスを開けたいなと思った。ちょっと洒落たことをしたいお年頃なので。
ただどうするのが一番いいかわからなかったので、あきらは素直に、すでに耳に穴を開けているクラスメイトを、相談相手として選んだ。
「へえ」
ピアス開けたいんだー、と切り出したあきらを見て、夏油は言った。
彼の耳にはいつも大きめのピアスらしきものがある。拡張しているようだから、かなりの上級者だ。本人の意思なのか、家の事情なのかは知らないが。
「やっぱ痛い?」
「いや、そんなに痛くはないけどね」
夏油が何気なく手を伸ばす。穴のひとつも開いてないあきらの耳たぶに触れたと思うと、びっくりして固まったあきらに微笑みかけた。
「あきらには開けて欲しくないなあ、と思って」
優しく感触を確かめながら、なんだかずるいことを夏油は言った。