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ピアスの話/歌姫さん

「嫌よ!」
「なんで!」
「なんで私がやらなきゃダメなのよ!自分で開けなさい!」
「ヤーーダーーー!!」

京都高専の寮にきゃんきゃんとうるさい女生徒二人の声が響く。またやってるよという雰囲気を遠巻きに感じながら、あきらは強情な歌姫のお腹にすがりついた。
無理矢理進もうとする歌姫に引きずられながら、それでも離すつもりはない。

「ピアスくらいいいじゃん」
「よくないわよ!失敗したら……」
「別にいいって~」

よくない!と歌姫が青筋をたてて吠えた。クソ真面目ちゃんだなあとあきらは呆れる。
自分でやるのは簡単だけど、それでも歌姫にやってほしいのだ。失敗したって残るならそれでいいのだ。なんでそれがわからないのだろう。

「……頷くまで離れないからね」
「アンタねえ……!」

トイレも風呂もついてくから覚悟しろお、と脅しのようなことを言うあきらの頭を歌姫が叩いた。あきらの腕はびくともしなかった。