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スカートの話/学生五条

五条に結構な距離を吹っ飛ばされたあきらが大の字になった格好のまま動かない。頭でも打ったのかと心配になった夏油がそばに寄ると、特に意識が飛んでいるということはないようで、鋭い目つきで空を眺めながら「むかつく」と一言言った。
ふ、と夏油が笑った間に体を起こし、自分の体の状態を確認している。上着を見てうわーと顔を顰めた。

「ジャージ破れた、最悪」
「ご愁傷様」
「……ちょっと着替えてくる。夏油、あいつの相手頼んだ」
「え?」

了承する前にあきらが立ち上がる。もう終わりかよと上機嫌で煽ってくる五条を無視して寮の方向へと走り出した。仕方ないな、と苦笑した夏油はあきらの頼み通り、こちらへ歩いてくる親友に向き直った。

 

あきらはほどなくして意気揚々と戻ってきた。
これまたあきらの言う通り交代した夏油は、少し離れた木陰から、今まさに組み手を再開せんとしている二人を眺めている。

「……オマエ」

さっきまでの上機嫌を引っ込めて、難しい顔をした五条が口を開いた。

「短パンとか履いてんだよな?」
「さあ。どうだと思う?」

しれっと返したあきらは短いスカートを履いていた。白い太ももを陽に晒してにっこり笑う。さっきまでのように組み手をすれば、まず間違いなく、いろいろ見えるに違いない。
いくら強くても五条は十代の多感な年頃の男で、だからこれは、あきらなりの仕返しだろう。

「五条、行くよ!」

逃げようとしたのだろうか。身動ぎをした五条を無視して、あきらが声を張り上げた。