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なんか生えた夢主と五条

※学生時代

面倒なだけの呪術実習だった。補助監督の話では手強そうなものもいるとのことだったので、適当に弱らせたあと親友へのお土産にでもしようと思っていたのだが、ガセだったのか何なのか、あきらと二人であっという間に一掃できてしまった。キョロキョロとあたりを見回してはみるけれど、あるのはそのうち消えるような残穢ばかり。
まあ俺が強すぎるのがいけないよな……とナルシストじみたことを思いながら、五条はくるりと振り返る。

「コンビニ寄ってもらってから帰ろう。ジュース飲みてえ」

話しかける先にはあきらが突っ立っている。一人で先走るなとか補助監督の言うことをちゃんと聞かないとだとか、普段はぎゃんぎゃんうるさい同級生だが、早く仕事が終わった日の寄り道くらいなら何にも言わないだろう。
五条の予想は当たり、あきらは文句は言わなかった。

「…………」

ただ返事もしない。
無視されるのは嫌いだ。途端に不機嫌になって、「あきら?」と返事を催促した。
そこで。

「どうしよう……」

消え入りそうな声が、あきらの喉からこぼれでる。
怪訝に思ってよく見れば、あきらの顔は青ざめている。どこか怪我でもしたのかと思って五条はあきらの様子を確認した。
外傷はない、ないが、あきらがさりげなく押さえている、言ってしまえば股間のあたりに、あきらのものではない呪力がわだかまっているのが、五条の目には見えてしまった。

「……ソレ」
「…………」
「一応聞いとくけど、トイレ行きたいとかそんなんじゃないよな?」

普段ならこれもぎゃあぎゃあ言うような聞き方なのを自覚して言ってみたのだが、あきらは弱々しく左右に首を振るだけだった。

「……」

気遣いなんてそんなものには生憎慣れていない。
ズカズカとあきらの方へ歩み寄り、そこをスカートの上から隠すようにしている小さな手を退ける。あきらが真っ青な顔のまま体を強ばらせた。そこには。

「ウッソだろ……」

五条は呆然と呟いた。
制服の布地を押し上げる、女性にはないはずの膨らみ。
五条が察するのは簡単だった。目のことはさておいても、自分にだって同じものがついているのだ。
あきらが「どうしよう」と最早泣き出しそうな声で言った。
あまりのことに絶句している五条に向かって、涙声が続く。

「お、収まらないし、なんでこんな……」
「……」
「どうしよう」

どうしよう、どうしようと、普段は気の強い同級生が、生まれて初めてついたモノを生まれて初めて勃起させながら、しくしくと泣き出している。
しらねーよ、とは流石に今のあきらには言えない。五条は形の良い眉を顰めて「落ち着け」と言った。

「とりあえず補助監督に報告して、高専帰って硝子に見てもら」
「やだぁ!!」

あきらが悲鳴を上げる。泣き声が一層大きくなった。
いっそ子供のように泣いているあきらの頭を宥めるように撫でると、五条はまた考える。
……たぶん勃ってるから余計に怖いんだろう。自分だって数年前、夢精した朝は病気にでもなったのかと怖くなったし、不意に勃起を経験したときは未知の感覚に混乱した。あと恥ずかしかった。
ついさっきまでなかったものが生えて、しかも元気に機能しているあきらのショックはきっとそれ以上だ。怖いし恥ずかしいし混乱しているに違いない。
五条は珍しく忍耐強く考えを巡らせた。あきらの状況が状況だし、頼れる人間だってここにはいない。居合わせてしまったのだから仕方ない。
本当は自分にだって、頼りたくはないのだろうし。

「……一回抜くぞ」

涙の滲んだ目で五条を見上げるあきらは言葉を理解していない。返事を待たず、五条はあきらの体を抱え上げた。問題の下半身には触れないよう気をつけながら、なんとなく壁の方に連れて行く。
下ろしてやると、涙の少し引っ込んだあきらが「五条?」と不思議そうな声を出す。五条はそれを振り払うように、あきらに背を向けて立った。

「見ないでいてやるから。やり方くらいわかんだろ」
「やりかた?」
「抜き方」
「…………わかんない」

あきらの口調は子供じみている。カマトトぶってんのかマジなのか判別がつかないが、偽る頭があるならこんなことにはなっていないはずだ。
五条は「……触るとか擦るとか」ととりあえず適当なアドバイスをした。

「出したら収まる」
「ほんとに?」
「ホントホント」

だから早くやれ、と急かすと、後ろでごそごそと衣擦れの音がした。すぐ後ろで、多分、あきらがタイツを脱ぐか何かして、性器に触れようとしている。五条の言う通りに。
かあっと頭に血が上ったのをなんとか無視して、今日の晩飯なんだろうなとか適当なことを五条は考えた。気は全く紛れない。
ごそごそ、という音がなくなって、今度はかすかに息を詰める音がした。ひっ、と小さな声が後に続く。

「五条、五条」
「…………なんだよ」

縋るように名前を呼ばれたら、答えざるを得なかった。五条に気を遣う余裕のないあきらが、「こわい」とまた泣きそうな声で言った。

「さ、さわると、へんなかんじで、こわい……」
「…………別に怖いとかねーから。死ぬ訳じゃないし」
「でもこわい……」

ぐすぐすえぐえぐと子供のように泣き出した。合間にごじょうごじょうと声が入るので、無視することもできない。
五条はしばらく葛藤した。その場にしゃがんで自分の頭をかき回し、終いに「あーもう!!」と声を上げた。
勢いよくあきらの方を振り返る。
涙をぐしぐしと制服の袖で拭った格好のまま固まるあきらに大股で歩み寄り、すぐ近くに座り込んだ。水分を湛えた瞳と目を合わせて、「後で文句言うなよ」と念を押す。
答えを聞かないまま、露出した下半身のブツに手を伸ばした。

「ひっ、」

あきらが脅えたように肩を竦ませる。

「…………デカ」

なんだこれ、と五条は素直に驚く。あまり見ないようにと考えていたことも忘れてついマジマジと見る。
まだ完全に勃ち上がっていないにもかかわらず、あきらに生えたそれは明らかに大きい。自分と張るくらい、いや負け、いやいやと考えながら、まずは確かめるように触れてみる。根本を隠すように生える柔らかい毛と、ついでに薄いピンクの下着も目に入り、またカッと頭に血が上った。

「ごじょう……」

不安そうにあきらが五条を見上げる。安心させるように頭をぽんと叩いてから、五条はそのままあきらを抱え上げ、胡座を掻いた自分の足の上に座らせた。
触りにくいから、と言い訳を口に出すと、あきらの体から力が抜ける。肩口に顔を寄せて、体重を預けてきた。

「……とりあえず触るから、オマエはなんかエロいことでも考えてろ」
「……エロいことって」
「あ゛ー…………。女の裸とか?」

言ってみてから気付いた。あきらにとって女の裸は自分の一部であって、特にエロいことではない。
女って何を考えたら興奮するんだろう、と初めての疑問を抱きつつ、まあいいやとあきらのご立派な性器に触れる。今度は確かめるのではない、快感を与えるための触れ方だ。
いつも自分がやるように、先端から滲んできた先走りを擦り付けて手を滑らせる。

「ぁ、あ、やだ、五条」

あきらが五条の肩を掴んだ。泣いているような篭もった声がすぐ近くで響いた。わざとではないだろうが体はますます密着して、ただの同級生だと思っていたあきらの柔らかさを五条に教えてくる。
これはまずい。

「……痛い?」
「い、いたくない」
「…………じゃあ、気持ちいい?」

まずい問いかけだと理性は訴えていた。けれど聞かずにはいられなかった。
五条は確かに、この奇妙な状況に、興奮を覚えてしまっている。正常な思考とはほど遠い。

「あ、ぁ、」

同じく正常な思考回路を手放したあきらが、きもちいい、きもちいいよと譫言のように繰り返した。その声は毒のように五条の耳に染み入る。

「……ははっ」

もう何もかもがどうでもいい。

頭を傾けて、ぎゅっと目を閉じているあきらの顔を見た。
時々声の漏れる唇に、引き寄せられるように自分のそれを寄せても、あきらは拒否なんてしなかった。