Skip to content

警報が鳴った/一年時さしす

※一年の時の五条たち

 

特級術師は忙しい。教師なんて仕事をしていると、なおのこと忙しい。自分で選んだ道とはいえ、三日で総移動距離日本縦断みたいなことをやっているとさすがに疲れてもくる。
激務を終えて昼にようやく高専に戻ってきたあきらは、昼食も取らずにまずは風呂に入ることにした。朝までいた廃屋のせいか身体中が埃っぽかったのだ。
熱いシャワーで汚れと疲れを流し、お気に入りの香りのシャンプーで髪を洗う。
泡を流し、ちょうど気分も良くなってきて、ふんふんと鼻歌を歌い始めたその時だった。

「──はっ?」

警報があった。
呪術界の要、呪術高専の敷地には天元様による結界が張られている。
敵を直接的に阻めるようなものではないが、感知には長けていて、中で登録外の術師の呪力が発生したら、職員始め校内の呪術師に知らせが来る仕組みだ。
その知らせが来た。
今シャワー中なのに。
あきらは一瞬肩を落とした。けれどそれは本当に刹那のことで、すぐさまお湯を止め浴室から飛び出る。体も髪もろくに拭かず、寛ぐために用意していた部屋着を急いで着て、自分の部屋を飛び出した。
今日はあきら以外に一級以上の大人の呪術師は待機していないはずだ。校内には生徒が数人おり、あきらはその生徒たちを守る義務を負った責任者である。シャワーだとか疲れてるとかそういった言い訳をここでするのは、最早あきらの思う教師の姿ではない。
なのであきらは走った。途中術式を使って移動し、まさに全速力で知らされた呪力の発生源へ向かった。

向かったのだが。

 

「あんたたちねえ!」
「……」
「……」

白頭と黒頭、とりあえず正座させた二人の学生たちを見下ろしながら、あきらは青筋を立てて怒った。
なんのことはない、警報の正体は夏油が呪霊操術で呼び出した呪霊だったのだ。着いた時にはすでに取っ組み合いに移行していた二人の生徒の間に入り、より上手く受け身の取れそうな夏油の方を蹴り飛ばして、あきらはなんとかその場を収めた。

「夏油!あんたが術式使うと警報鳴るんだから、使う時は事前に申請しなさいって何度も言ったでしょ!」

まず夏油の方を叱り付けると、夏油は気まずそうな表情のまま、ぎこちなく顔を逸らした。
そのままどうせあんたが煽ったんでしょうが!とこちらは夏油よりも少し付き合いの長い、隣の五条を叱り付ける。
五条もやっぱり顔を逸らした。
なんだか二人とも、いつもより随分しおらしい。
いつもだったら夏油はうさんくさい笑顔を浮かべて、すべての罪を五条になすりつけようとするだろうし、五条の方は馬鹿にしたような顔でもし警報が本物だったとして俺らになんとかできねーわけねーだろとか本当でありながら腹の立つことを言ってくるはずだ。
なんだか調子が狂う。
拍子抜けだ。
あまりに違う一年二人の様子に少し気を削がれて、あきらは咳払いをした。

「…………ま、まあ、反省してるなら次からやらないように」
「あきらちゃん」
「ん?家入?」

ていうか教師をちゃん付けはやめなさい、といくらか勢いのなくなった注意をすると、家入はあははと笑って、「違う違う」と言った。

「は?何が?」
「あきらちゃん、お風呂入ってたでしょ」
「入ってたよ!なのに警報あったから急いで……」
「格好ひどいもんね。はい、タオル」

ひどい?と首を傾げながらタオルを受け取った。
そういえば慌てたり怒ったりで忘れていたが、ろくに身体も拭いていないんだった。髪からは未だにぼたぼたと水滴が落ちているし、服は水を吸って体に張り付いている。家入が言った通り、ひどい格好ではあるだろう。

「こいつら、目の遣り場に困ってるだけだから。反省なんかしてないよ」
「……硝子うるせー。あきら、はやくどっか行けよ」
「……少しは恥じらいを持ってください」

はあ!?とあきらは声を上げた。
なんでそこまで言われないといけないのか。そもそもこんな格好で外に出てくることになった原因はお前たちだろうが。
あとそれから。

「ガキ相手に恥じらいが持てるか!」

大きくがなった瞬間、乱暴に投げられた二人分の上着があきらの顔に当たった。