Skip to content

気にしない五条

※過去編軸

 

寮共用の大きな冷蔵庫にはいつも、誰かが書いたメモがペタペタと貼ってある。暑い外からやっと戻り、冷たい飲み物を求めてやってきた高専二年の三人は、ふとその中の一枚に気づいた。
 

『アイス食べていいよ(五条以外)』
 

綺麗とも汚いとも言えない字で書かれた内容を見て、一瞬三人の動きが止まった。

「……何かしたのか、悟」
「……さあ?」
「あきら先輩だよね、コレ」

本気で心当たりがなさそうな五条が首を傾げる。

まあでもアイスがある、というのは朗報なので、冷蔵庫ではなく、その横に置かれている大きめの冷凍庫を開ける。
中にはメモ通り箱入りの棒アイスがあり、硝子は箱ごと取り出して、その中の一本を手に取った。続いて夏油も一本。
それから最後に、五条が当たり前のように手を伸ばす。

「五条以外って書いてあるけど?」
「大丈夫大丈夫、バレないバレない」

硝子の問いかけに二回ずつ繰り返して、五条は鼻歌と共に平然と包装を破る。メモを書いた先輩を舐め切っているということがその態度からは伺えた。

「……多分さ、こういうとこだよね」

呆れたような表情の硝子が夏油に同意を求める。そうかもねぇ、と曖昧に答えながら、夏油は困ったように笑っていた。